スペアミントとペパーミントは、それぞれ私たちがミントと呼ぶハーブの一種です。分類学的にはシソ科ハッカ属の植物です。
ハーブとしてのスペアミント、ペパーミントをあまり知らないのに、どうしてミントを知っているかというと、お菓子などに使われているからだと思います。
例えば、ミント味のチューインガムがありますね。アイスクリームにもチョコミント味などがあって定番になっていますね。
では、ミントの世界をアップルミントとペパーミントを中心に詳しくみていきましょう。
1.スペアミント、ペパーミントの名前と歴史
スペアミントもペパーミントも古くから知られていたハーブです。
スペアミントは紀元前400年頃に歴史上に登場していますので、その前から利用されていたのでしょう。ローマ帝国でも盛んに収穫され、消臭やねずみ除けなどに使われていました。
スペアミントはその後イギリス地方にももたらされ、やがて胃や呼吸器の薬として用いられるようになりました。そして、その薬はまさに「ハーブティー」として飲まれていたのです。
やがて中世になると、スペアミントをすり潰して塩と混ぜ、傷口に塗る薬としても使われるようになりました。
その後、植民地時代にスペアミントはアメリカにもたらされます。そして1893年にリグレー社がスペアミントガム(Wrigley’s Spearmint)を発売して大人気商品となりました。スペアミントはこのガムの生産のため大量栽培されるようになったのです。
一方のペパーミントですが、このハーブはスペアミントとウォーターミントの交雑種と考えられています。
ですから、先ほどスペアミントの歴史を紹介しましたが、いつもの通り古代ではこれらの区分があまり正確ではありません。もしかしたらペパーミントの歴史だったのかもしれません。
という訳で、かなり不明な点も多いペパーミントの歴史なのですが、確実なものもありますのでご紹介しましょう。
最も古いものでは、紀元前1000年頃のピラミッドからペパーミントの葉が発見されています。またローマ帝国ではスペアミントとペパーミントがどちらも栽培されたり収穫されたりしていた記録が残っています。
ペパーミントは自然交雑種です。実際に自然とペパーミントが誕生した記録は残っているのでしょうか。
ありました。最も古いものでは1750年に自然交雑種としてのペパーミントが確認され、1790年にはアメリカで栽培が始まったとされています。主に消化器官の薬として用いられていたようですね。
ところでスペアミントとペパーミントに共通する「ミント」の名前ですが、これはギリシャ神話に由来します。
ある日、冥王ハデスが森を歩いていると美しい妖精ミンテに出会います。ハデスはひと目見てミンテを気に入り、どうにか連れて行こうと企みました。実はハデスは誘拐が得意で、今の妻ペルセポネも誘拐してきた女性だったのです。
ミンテを誘拐しようとしているハデスに気づいたペルセポネは烈火のごとく怒りました。そしてハデスが目を離している隙に、ミンテを植物に変えてしまったのです。
悲しんだハデスは、どこにいてもミンテに気づくことができるように植物に甘い香りを授けました。これがミントになったというお話しです。
日本ではミントのことを薄荷(はっか)と呼びます。おかしな名前ですね。スペアミントをオランダハッカ、ペパーミントをセイヨウハッカと呼びます。
薄荷と書くのは理由があります。中国語でも薄荷と書くのですが、荷が軽いという意味を持っています。
ミントの葉は大量に収穫されますが、大半は蒸留して精油を抽出して使われてきました。蒸留する前には大量にあった葉から、わずかの精油しか取れないため、蒸留すると運ぶ荷が軽くて済むということから薄荷と呼ばれるようになったそうです。
2.スペアミント、ペパーミントの香りや味
スペアミントとペパーミントは同じハッカ属の仲間ですが、香りと味は少し異なります。
分かりやすいのでここではスペアミントとペパーミントの精油の成分を比べてみましょう。
スペアミントのほうは、カルボンが約60%、リモネンが約10%です。どちらも芳香を持つ成分です。
スペアミントはやさしい香りを持っているため、ハーブティーやお菓子、更にはサラダなどにも使われています。
一方のペパーミントは、主成分がメントールです。良く知られている名前ですね。聞くだけでスーッとしてきます。
メントールはいろいろな薬に応用されていますね。例えばリップクリームやのど飴、筋肉痛を抑える薬。
またタバコの中にもメントールのフレーバーが楽しめるものがあります。
一般的にはスペアミントの方が優しい香りで、ペパーミントの方が強い香りを放つと言われています。しかしながら、かなり個性のあるハーブなので、必ずしもそうとは言い切れない場合があります。
3.スペアミント、ペパーミントの育て方
スペアミント、ペパーミントはとても丈夫で繁殖力があるので、初心者の方にもおすすめできるハーブです。
ミントの苗が園芸店やホームセンターで売られていますので、それを使うと失敗がありません。
植え付けは4月5月の暖かい時期に行います。大き目の鉢に網を敷き、その上に軽石を敷いてからハーブ用の土を入れ、苗を植え付けます。たっぷりと水をあげましょう。
暑すぎない日当か、半日影で育てます。土が乾きすぎないように気をつけましょう。
またミントの特徴として栄養が多すぎると香りが弱くなります。追い肥などを与え過ぎないよう、成長を見ながらコントロールして下さい。
花が咲いたら摘んでおきます。花が咲いても香りが弱まってしまうからです。
冬は地上部は枯れますが、地下茎は生きています。できれば室内で水を少な目で保管しましょう。
4.スペアミント、ペパーミントの使い方
これは簡単です。育てているスペアミント、ペパーミントの若葉を摘み取ってそのまま使いましょう。フレッシュな香りが楽しめます。
5.スペアミント、ペパーミントを使った料理レシピ
ミントは香りを楽しむハーブですから、ミントだけを大量に調理するようなことはありません。
ミントの香りによって、少しだけ日常がリッチになる。そんなレシピを揃えてみました。
5-1.ミントティー
ほんのり香るミントのアロマ。そんな香りに癒されながら過ごす午後のひととき。
いつもと違った安らぎが楽しめそうです。
材料:1人分
スペアミントの葉 10枚程度 お湯 |
(1)スペアミントの葉を1枚1枚摘んでティーカップに入れる
(2)熱湯を注ぎ、2分おいたら完成!
(3)お好みで砂糖を加えてもオッケー
5-2.ミントとキュウリのサラダ
キュウリのサラダと聞くと何とも平凡な印象がありますね。
ところが、そこにミントのアクセントが加わるだけで、おしゃれなサラダに大変身します。
材料:2人分
スペアミントの葉 20~30枚 キュウリ 2本 玉ねぎ 中1/2個 オリーブオイル 大さじ1 白ワインビネガー 大さじ1 塩 小さじ1/2 砂糖 小さじ1 黒コショウ 適量 |
(1)キュウリを厚めの輪切りに、玉ねぎをみじん切りにして水にさらしておく
(2)ざるにキュウリを入れ、塩をまぶし、20分置いて水を抜く
(3)キュウリの水気をキッチンペーパーなどで良くふき取る
(4)ミントの葉をみじん切りにする
(5)ボウルにすべての材料を入れてよく混ぜ合わせる
(6)ラップをして冷蔵庫で10分冷やしたら完成!
5-3.トマトとツナのカッペリーニ
次は暑い季節におすすめの冷製カッペリーニです。イタリア語ではカペッリーニというのが近い発音です。
トマトとツナという黄金コンビにミントの香りを添えてみましょう!
材料:2人分
ペパーミントの葉 10枚 トマト 中1個 ツナ缶 1個 玉ねぎ 中1/2個 ニンニク 1かけ オリーブオイル 大さじ1 塩コショウ 適量 カッペリーニ 200g(パスタ麺でも構いません) |
(1)トマトを小さめの角切り、ニンニクと玉ねぎはみじん切りにする
(2)ボウルに玉ねぎを入れ水に10分以上さらす
(3)別のボウルにニンニク、オリーブオイル、トマト、油を切ったツナ、水を切った玉ねぎを加えて良く混ぜる
(4)鍋に湯を沸かし、カッペリーニを茹でる
(5)茹で上がったカッペリーニを水で冷やし、水気をしっかり切る
(6)ボウルにカッペリーニを加えて良く和え、塩コショウで味を調える
(7)皿に盛りつけて、手でちぎったミントの葉をまぶしたら完成!