ローリエのさわやかなやさしい香りは、肉や魚の臭みを消し、野菜の甘さを引き立てます。
でも、子どものころシチューなどをスプーンでガバっとすくって口に入れた時、ローリエの硬い葉っぱに驚いた経験がある人も少なくないと思います。
子どもにとっては理解できない存在ですね。
古くからヨーロッパで用いられてきたローリエ、その全貌を詳しく調べてみましょう。
1.ローリエの名前と歴史
有名なスパイスであるローリエは、ゲッケイジュ(月桂樹)の葉を乾燥させたものです。
ローリエはフランス語のlaurier の日本語読みですが、英語ではローレル(laurel) と言ったり、ベイリーフ(bay leaf)とも呼ばれています。
東洋では中国で月にある月桂という木に似ているということから月桂と呼ばれるようになり、日本でも月桂樹と呼ぶようになりました。中国ではローリエ自体は月桂葉と呼びますが、日本ではローリエやベイリーフなどと表記されています。
ローリエの元となるゲッケイジュは小アジア原産ですが、古くから地中海沿岸各地で栽培されてきました。ゲッケイジュは雌雄異株の常緑広葉樹です。そして、このゲッケイジュにまつわるギリシャ神話がよく知られています。
ある日アポロンは、愛の神エロスがかわいい弓矢を持っているのを見て、からかってみてしまいました。そんなおもちゃみたいな弓矢を持って楽しいかと。
怒ったエロスは、この弓矢は人を殺すものではなくて、人の心を変化させるものだと反論します
ところがアポロンはだったら俺にやってみろと鼻で笑って去っていきました。
しばらくして、エロスは鉛の矢を河の神ペーネイオスの娘ダプネに射ち込み、黄金の矢をアポロンに射ち込みました。黄金の矢は恋の矢でした。アポロンはダプネを見るなり求愛します。しかし、ダプネに刺さった矢は、相手を拒む矢だったのです。ダプネはかたくなにアポロンの求愛を拒否します。
しつこく迫るアポロン。無理もありません。このイケメンで権力もある神を、女性が拒否するなんて考えられなかったのです。あまりにしつこく追い求められたので、ダプネは父のペーネイオスに懇願します。身を清いまま保てるように他のものに変えてほしいと。
アポロンが追いついた時、彼女の体は1本のゲッケイジュになっていました。ペーネイオスが要望を聞き入れたのです。アポロンの悲しみ方は尋常ではありません。ゲッケイジュの枝を取って、冠を作って身に着けました。そう「月桂冠」(Laurel wreath)です。
以来、アポロンは常に月桂冠を頭につけています。そして古代ギリシャやローマでは、この月桂冠を勝者にかぶせ、栄光の冠としたのです。有名なのは古代オリンピアの勝者に与えられた月桂冠ですね!もちろん勝者のまわりにはローリエの香りが漂ったことでしょう。
現在のオリンピックではゲッケイジュではなく、平和の象徴オリーブの枝が使われているようです。確かにアポロンだと芸術とか音楽の大会みたいになってしまいますからね。。。
ローリエは日本に明治38年頃に入ってきたと言われています。確実なところでは、日露戦争の戦勝記念植樹に使われた記録が残っています。意外と新しいのですね。おそらく漢方薬としての使用がなく、香辛料や保存料として使われてきたため、渡来も遅れたのではないかと考えられます。
2.ローリエの香りや味
ローリエの香りの主成分はシネオールで、しょうがやカルダモンの香り成分と同じものが含まれています。このシネオールは樟脳に似たさわやかな香りを放ちます。
他にもハジリコやローズマリーなどがこのシネオールの成分を含んでいます。
ローリエは昔から肉や魚の臭い消しとして使われてきました。昔は冷蔵庫などありませんでしたから、肉や魚もどんどん傷みます。少し腐ったものも料理には使わざるをえませんでした。そこで登場するのがスパイス、ローリエです。
煮込み料理などに1、2枚入れておけば、傷んだ肉の臭いも消え、さわやかな香りの料理を楽しむことができました。
また米や小麦粉を保存するにも虫除けのためにローリエを入れるということが行われていました。もしかしてゴキブリなどにも効くのでしょうか…
3.ローリエの育て方
本当はゲッケイジュの栽培というべきところですが、スパイスの話ですので、ローリエの栽培として進めさせて頂きます。
ローリエの栽培は日本でも簡単です。まず苗が容易に手に入ります!これですよね、これ。スパイスの栽培をしようと思っても、まず壁にぶつかるのが苗です。ところがローリエはこれが手に入ります。
しかもローリエは丈夫な植物で、土を選り好みしません。庭に植えてしまっても大丈夫です。
庭に植えた場合は、日ごろの水やりは特に必要ありません。鉢植えの場合は、水やりは控えめに、土が乾いてから行って下さい。
ローリエはぐんぐん成長します。放っておくと大きくなりすぎますので、春と秋に少し短めに刈込みましょう。切りすぎたくらいでもまた芽吹いてきますので問題ありません。
4月~5月頃に黄色い花が咲きます。株に雌雄がありますので、雌雄揃っていれば実も付きます。
日本でも店先の生垣に使われているのを良く見ます。葉が良く茂りますし、良い香りもします。大きめの鉢に育てて並べるのもいいですね!
4.ローリエ(乾燥ハーブ)の作り方
ローリエの葉を枝ごと切り取って、日陰の風通しのよいところで乾燥させます。
葉が完全に乾燥して、パリパリの状態になったら完成です。
ただし、このやり方では市販のローリエのような平らなものはできません。料理に使うので問題はないでしょうが。。。
ほかの方法としては、冷蔵庫の中に網の台を置いて、その上にローリエの葉を並べて乾燥させる方法があります。臭いはありますが、きれいに乾燥させることができますよ。
5.ローリエを使った料理レシピ
ローリエはどんな料理にも合うハーブですから、用途も無限大です。今回はその中から、簡単なレシピを三つ選んでみました。
5-1.ミートソース
子どもにも人気のメニュー「ミートソーススパゲッティ」。今回は、ローリエを使ってそのソースを手作りしたいと思います。
冷凍も出来て、他の料理にもアレンジできる万能ソースが出来上がります!
材料:4人分
ひき肉(合いびき) 200g マッシュルーム 小4個 ローリエ 1枚 玉ねぎ 中1個 にんにく 1片 トマト缶(ダイス) 1缶 塩 小さじ1 コンソメ 1個 ケチャップ 大さじ2 ウスターソース 大さじ2 オリーブオイル 大さじ1 |
(1)にんにくと玉ねぎをみじん切りにし、マッシュルームは薄切りにする
(2)フライパンにオリーブオイルを熱し、にんにくと玉ねぎを焦がさないように炒める
(3)玉ねぎが透き通ってきたら、ひき肉を入れ、よく炒める
(4)ひき肉に火が通ったら、トマト缶と塩、コンソメを加えひと煮立ちさせる
(5)ローリエ、ケチャップ、ウスターソースを加えよく混ぜ合わせ、弱火で20分煮込む
(6)最後にマッシュルームを加え、塩で味を調えたらミートソースの完成!
(7)お好みのパスタにかけて召し上がってください!
5-2.ローリエ香る簡単ピクルス
このピクルスは、彩り豊かになるように具材をセレクトしてみました。
実際には、冷蔵庫の中の余りものなど、自由にアレンジしてみましょう。
材料:4人分
赤パプリカ 1/2個 黄パプリカ 1/2個 セロリ 1本 きゅうり 1本 ローリエ 1枚 黒コショウ 10粒 クミンパウダー 小さじ1 乾燥赤唐辛子 1本 にんにく 1片 酢 2カップ 塩 小さじ2 三温糖 大さじ5 |
(1)赤パプリカ、黄パプリカ、セロリ、きゅうりはそれぞれ長さを合わせながら、食べやすい形にカットする
(2)にんにくをみじん切りに、赤唐辛子は輪切りにする
(3)鍋に酢、ローリエ、にんにく、赤唐辛子を入れ、煮立たせる
(4)煮立ったら、火を弱めて三温糖、塩、黒コショウ、クミンを入れ良く混ぜ合わせる。三温糖が溶けきらない場合、少し水を足してみて下さい。
(5)三温糖が溶けたら、赤パプリカ、黄パプリカ、セロリ、キュウリを入れ、具材がしんなりするまで煮る
(6)火を止め、鍋に入れたまま冷ます
(7)冷めたら、タッパーや瓶などの容器に移し替えて冷蔵庫で一晩置いて完成!
5-3.にんじんのグラッセ
子どもの頃、にんじんが嫌いだった方は多くいると思います。比較的好き嫌いがない私も苦手なほうでした。
特に給食でにんじんのバター煮というのが出されたのですが、にんじんの臭さとバターの臭さの相乗効果で嫌われメニューナンバー1だったのを思い出します。
このグラッセは、ローリエとバターの香りがにんじんの甘味を包み込むようなやさしい味わいです。
材料:2人分
にんじん 1本 ローリエ 1枚 三温糖 大さじ2 塩 少々 バター 10g 水 適量 |
(1)にんじんの皮をむき、一口サイズに切る
(2)にんじんの角をピーラーで丁寧に面取り(角を削る)する
(3)鍋ににんじん、ローリエ、三温糖、塩、バターを入れ、ひたひたの水を加える
(4)はじめは強火で沸騰させ、沸騰したら弱火~中火でにんじんがやわらかくなるまで煮込む
(5)にんじんがやわらかくなったらざるにとり、ローリエを取り出し、水気を切る
(6)あら熱が取れたら完成!
★レシピの裏ワザ★実際に作られるとわかりますが、香りはやさしめになっているレシピです。もう少しバターの香りなどが欲しい場合には、分量を倍にしても美味しく食べられます。