夏にピッタリな爽やかな香りを持つハーブとして人気のバジル。
日本で主に手に入るバジルはスイートバジルの仲間で見た目もそんなに違いはないのですが、実は100を超える種類がある多様性のあるハーブなのです。
私たちが大量のバジルに出会える機会は、パスタ屋さんでジェノベーゼを注文したときに訪れます。
これも20年くらい前まではジェノベーゼを食べられるところは限られていたのですが、最近はメニューに当たり前のように「ジェノベーゼ」を見つけることができます。
今日はこのバジルを取り上げて、詳しく学んでいきましょう!
1.バジルの名前と歴史
バジルはインドあたりの熱帯を原産地とするシソ科の多年草で、5000年もの昔から栽培されてきました。現在は世界各地で栽培されている人気のハーブです。
<参考:シソ科のハーブ>
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イタリア料理に使われるものはスイートバジルという品種で、和名をメボウキと言います。インド料理やタイ料理に使われるものはホーリーバジルという品種が多く、こちらは和名をカミメボウキといいます。
バジルは英語のBasilの日本語読みで、英語のバジルはギリシャ語のbasileus(王)という言葉に由来します。また想像上の怪物「バジレスク」に由来するという説もありますが、こちらも語源がギリシャ語のbasileusだそうです。
1世紀の薬草学者ディオスコリデスは、視力回復のためにバジルとワインを勧めました。これはバジルワインのようなものを飲むということだったのでしょうか。それともワインを飲みながらバジルを食べるということだったのでしょうか。
西暦320年頃、コンスタンティヌス1世の母「聖ヘレナ」はゴルゴタを巡礼するのですが、その際にキリストが磔になった十字架(True Cross 聖十字架)を発見します。その十字架の周りに生えていたのがバジルだったと言われています。この発見伝説は、その際にキリストに打ち付けた釘や、キリストの脇腹を刺した槍も見つけた、と言われているので真偽はかなり怪しいのですが。。。
また中世ヨーロッパでは、バジルの粉が脳に入るとサソリが湧くと言われていたり、神に捧げる神聖なハーブとして用いられたりと、バジルが良く知られたハーブであったことだけは間違いなさそうです。
このようにヨーロッパに広がっていったバジルですが、原産地はインドが有力視されていてアーユルヴェーダにも用いられています。またエジプトでは、バジルはミイラの防腐剤として利用されていました。この辺はバジルの香りを想像すると納得感のある話ですね。
一方で東に目を向けると8~9世紀頃には中国でも使われていたとも言われていますが、それ以前の記録は見つかっていません。
日本には16世紀頃に入ってきたと言われています。和名をメボウキと言います。ちょっと変わった名前ですが、それは日本にもたらされたバジルの機能にあったのです。
バジルは中国から薬用として伝わりました。中国語では「羅勒」と書くのでメボウキでは無いと思うのですが、同じような使い方がされていました。目にバジルの黒い種子を入れるのです。
えっ!と思われるかもしれませんが、バジルの種は水分を吸うとゼリーのように柔らかくなります。そして目に入ったごみを取り除いたのだそうです。目のゴミを掃除するので「メボウキ」なのですね!
イメージとしては粒の小さいタピオカでしょうか。そのやわらかな触感から、東南アジアではバジルシードとしてスイーツに使われているのです。
2.バジルの香りや味
バジルは種類によっても香りや味が異なりますが、スイートバジルはアネトールや里奈ロールなど爽やかな香りや味が特徴です。
ホーリーバジルは、スイートバジルに比べてお香のような香りが強く、エスニック系の匂いが強い料理によく合います。
またインドではアーユルヴェーダ(インドの古典医学)にも登場し、風邪や頭痛、胃腸病などへの薬として用いられていました。
3.バジルの育て方
バジルは簡単に育てることのできるハーブですが、種から育てるとやはりいろいろ難しいところが出てきますので、できれば苗を買ってくることをおすすめします。
買ってきた苗を赤玉土に腐葉土を混ぜた土を入れた鉢に移します。土が乾かないようにしっかりと水分を与えましょう。
しばらくするとどんどん葉が増えてきます。バジル栽培ではそこで摘心という作業が入ります。
どういうことかと言うと、丈が20センチを超えてきたら、上の方を切ってしまうのです。その際に葉のすぐ脇を切るのではなくて、葉が出ている付け根から少し上を切るようにしましょう。すぐに新しい芽が生えてきますよ。
摘み取った葉は、バジルとして使いましょう!また土に挿しておけば、そこから育ちますので、増やしたい場合は新しい鉢に同じ土を入れて挿してみて下さい。
4.自家製ドライバジルの作り方
バジルはフレッシュハーブとしても使うことが多いと思いますが、たくさん収穫できた場合にはドライパセリとして保存する方法があります。ここでは電子レンジを使ったドライバジルの作り方をご紹介します。
(a)バジルを良く洗って、キッチンペーパーでしっかり水気をふき取る
(b)茎は使わないので、葉を茎から丁寧に摘まみ取っておく
(c)耐熱皿にキッチンペーパーを敷き、その上にバジルを重なりがないように置く
(d)電子レンジで1分(500W)加熱。なるべく黒くならない程度で抑える
(e)いったん皿を取り出し、バジルを裏返して、電子レンジでさらに1分(500W)加熱
(f)まだ湿り気があるようなら、10秒単位で追加加熱
(g)バジルがカサカサになったら取り出して、キッチンペーパーごと手で良く揉む
(h)全体が粉々になったら完成!熱をしっかりとってから瓶などで密閉保存する
5.バジルを使った料理レシピ
さあバジルを使ったレシピを3つ紹介して行きましょう。今回は日本的に言えばメインディッシュが2皿と前菜が1皿です。
バジルはとても香りがよいハーブですが、暑い室内に置いておいたりするとすぐにへたってしまいます。
買ってきたバジルはすぐに使い切るか、水分を加えて野菜室で保存しておきましょう!
5-1.ジェノベーゼ・パスタ
バジルの香りたっぷりのパスタです。元々はイタリア・ジェノヴァの料理と言われていますが、pasta Genovese や pasta alla Genovese と言ってしまうと、マカロニ系のショートパスタがミートソースで和えられたものが多いかと思います。
ということから、ジェノベーゼ・パスタの表記もどうかと思ったのですが、日本ではジェノベーゼで通っていますので、そのまま行かせて頂きます!
材料:2人分
スイートバジル たっぷり 松の実 20g にんにく 1片 オリーブオイル 1/2カップ 粉チーズ 20g お好きなパスタ 200g 塩コショウ 少々 |
(1)バジルの葉を手で茎からちぎって洗い、キッチンペーパーなどでしっかり水気を切る
(2)にんにくを半分に切っておく
(3)フードプロセッサーに、松の実、にんにく、オリーブオイル、粉チーズ、塩コショウを入れ、滑らかになるまで撹拌する
(4)バジルを加えて滑らかになるまで撹拌する
(5)鍋に湯を沸かし、1リットルあたり小さじ1の塩(分量外)を加えてからパスタを茹でる
(6)パスタを湯きりしたら、別の鍋でさっと(4)のソースと和えて、塩コショウで味を調える
(7)皿に盛ったら完成!バジルの葉を添えたり、さらに追加で粉チーズを振ったりしても美味しく食べられます
5-2.ガパオライス
タイ料理でも人気の高いガパオライス。
ガパオは「ホーリーバジル」のことですから、本来はホーリーバジルを使いたいところですが、中々手に入らないので、ここではスイートバジルを使ったレシピを紹介します。
そしてガパオがたくさん入ったライスという料理ですから、バジルをケチってはいけません。たっぷりと入れましょう!
お米は、日本のお米でも美味しいですが、ジャスミンライスというタイ米を使えば、さらに美味しく食べられますよ!
材料:2人分
スイートバジルの葉 20枚程度 鶏ひき肉 100g 鶏もも肉 100g 赤パプリカ 1/2個 黄パプリカ 1/2個 玉ねぎ 1/2個 にんにく 1片 乾燥赤唐辛子 1本 サラダ油 大さじ2 ナンプラー 大さじ1 オイスターソース 大さじ1 酒 大さじ1 砂糖 小さじ2 鶏ガラスープの素 小さじ1 塩コショウ 適量 玉子 2個 |
(1)フライパンに大目に油を引き、揚げ焼きにするように半熟目玉焼きを作る
(2)バジルの葉を手で茎からちぎって洗い、キッチンペーパーなどでしっかり水気を切る
(3)にんにく、玉ねぎをみじん切りに、赤黄パプリカは細切りか細かい乱切りにする
(4)鶏もも肉をなるべく細かい小間切りにしておく
(5)フライパンにサラダ油、にんにく、赤唐辛子を入れ、弱火で香りを出す
(6)玉ねぎ、パプリカを加えて炒める
(7)鶏ひき肉、鶏もも肉を加えてさらに炒める
(8)肉に火が通ったら、ナンプラーから鶏ガラスープの素までの調味料を加え、よく混ぜる
(9)最後に添える分を残し、それ以外のバジルを軽くちぎりながら加え、ひと炒めする。バジルが小さくなってしまうので、炒め過ぎないこと。
(10)皿にご飯と一緒に盛り付け、目玉焼きと取って置いたバジルの葉を添えて完成!
タイの現地でガパオライスを頼むと往々にして目玉焼きがついてきません。そうです、本場では目玉焼きは必須ではないのです。もちろんオプションで目玉焼きを乗せてもらうことはできます。そうそう今ではすっかり有名になったハワイのロコモコも、元々は目玉焼きが無くて、後から追加されたのです。最初はご飯にハンバーグをのせてグレービーソースをかけただけのシンプルな料理だったのですよ。
5-3.カプレーゼ
カプレーゼとは、イタリア南部カンパニア地方のカプリ島のサラダのことで、トマト、バジル、モッツァレラチーズをオリーブオイルと塩コショウで味付けたものです。
イタリア語では「インサラータ・カプレーゼ」、英語では「カプレーゼ・サラダ」と呼びます。
材料:2人分
スイートバジルの葉 8~10枚程度 モッツァレラチーズ 適量 トマト 中2個 オリーブオイル 大さじ2 塩コショウ 適量 |
(1)バジルの葉を手で茎からちぎって洗い、キッチンペーパーなどでしっかり水気を切る
(2)トマトを、幅を揃えて輪切りにする
(3)モッツァレラチーズを、トマトと同じ枚数輪切りにする
(4)下からトマト、モッツァレラチーズ、バジルとなるように重ね合わせる
(5)塩コショウで味を調えて、オリーブオイルをかけまわしたら完成!