山椒(さんしょう)は古くはハジカミと呼ばれ、日本では古くから香り、辛味のスパイス、ハーブとして使われてきた歴史があります。
山椒はその葉、花、実、皮と全てがスパイス、ハーブとして用いられるのが特徴で、古い家の庭などには山椒がよく植えられていたものでした。
以前に学んだ中国の花椒(オアジャオ)と同じように、日本の山椒も痺れる辛さと、何とも言えない爽やかな芳香があります。
今の時期は、山椒の葉(若葉)が「木の芽」と呼ばれて、気の利いた料理に加えられているのを見ますね。特に木の芽と筍の組み合わせは絶品です!
1.山椒の名前と歴史
ここで取り上げている山椒は日本原産の山椒です。
冒頭にも書きましたが、山椒は古くはハジカミと呼ばれ、「薑」と書かれていました。
ところが、この呼び名「薑」は、ショウガも同じように呼ばれていたため、文献を調べていてもどっちがどっちだか分からないことになっています。
ショウガのところでも説明した通り、じきにショウガは「薑」、山椒は「椒」と区別して使われるようになったので、混乱することが無くなったのです。
ところで先日、アメリカの友人から山椒は英語で何と言うのかと聞かれてはたと困りました。
というのも一般的には山椒は英語で Japanese pepper とされているからです。
山椒の葉がハーブ的に使われることが多いにもかかわらず、ペッパーとは何とも納得できない名前に思えてしまいます。
仕方ないので、その友人にはスパイスでもあるが、ハーブでもあるという説明をたっぷり加えて教えてあげました。
ついでに日本人に Japanese pepper はあるか?と聞いても、山椒であることはほぼ理解されないであろうことも。
さて、この山椒は生薬として用いられてきました。
中国では「神農本草経」に蜀椒の名前で花椒が使われていたようですが、日本では大部分において、花椒の代わりに山椒を使ってきたと考えられています。
山椒の使われる部位は果皮。乾燥させてからすり潰して粉にして使ったようですが、これ単独では粉山椒そのものですね。
この粉山椒を整腸剤や痛み止めとして使ってきたようです。
山椒の香りと辛みがいかにも胃腸に効きそうですね。
ここで一枚の写真が登場しました。小さなグリーンの果実ですね。
これが山椒の実です。実山椒ともいいます。
春先に花が咲いて、夏に実がなるのですが、青いまま収穫して水煮にしたものを使います。
どこかケッパーに似ている見た目ですね。
これを煮物に入れれば、肉や魚の臭みを消し、ピリッとした辛みをアクセントとして加えることができます。
こちらは山椒の実を赤くなるまでじっくり成熟させてから果皮を収穫し、乾燥したものです。
乾燥の過程で実が割れて種が飛び散っているのが分かると思います。
乾燥した山椒は、水煮と違ってかなり硬いので、手指で砕いて使うか、粗めにすり潰してから使用します。
また乾燥すると辛みも増してくるので都度分量は確認して使うようにしましょう。
香り、辛味以外にも色味を加えることができるので、目的に応じて使い分けるといいと思います。
ここまで山椒の葉と実の使い方を見てきましたが、山椒は花も使います。
この写真にある山椒の黄色い花は、雄株の花です。
山椒は雌雄別株なので、雄株の花の後には実がなりません。
でも、雄株には雄株ならではの楽しみ方があります。
受粉さえできれば摘んでしまっても良いので、花を摘み取って花山椒として楽しむのです。
実のような辛さはありませんが、香りが楽しめます。
おススメは酢の物です。春の息吹を感じることができると思います。
あと残りの部位はどこでしょうか?
樹皮です。
兵庫県に「からかわ」という珍味があるのですが、このからかわがまさに山椒の皮を使った逸品です。
使う部位は山椒の若枝の外の硬い皮を剥いだ薄皮。
これを細かく刻んで佃煮にしたものです。
この山椒の佃煮、実の数倍辛いと謳われていますが、実際は辛いというよりも痺れるといった感じでしょうか。花椒を使った辛い麻婆豆腐の辛さに似ていました。
さあここまで見てきた通り、山椒は、山椒の葉(木の芽)、山椒の実(実山椒)、山椒の花(花山椒)、山椒の皮とあらゆる部位が使われている食材なのですね!
2.山椒の香りや味
皆さんは山椒の葉、いわゆる木の芽を使う時に料理人が木の芽を手に乗せて「パンッ!」と叩いているのを見たことがあると思います。
叩く前と後はどう変わりましたか?
そうですね、香りが増したと思います。
実は山椒の葉には、香りの元となるオイルが溜まる油点があります。
これは山椒の葉を拡大した写真なのですが、白いというか透明な点がポツン、ポツンとあるのが分かると思います。
それが山椒の「油点」です。
これはミカン科の植物にみられる特徴なのですが、ここに香りのオイルが溜まっているのです。
山椒の葉を手の上で叩くことで、この油点が壊れオイルと共に香りが放出されるのです。
香りの元になる成分はいくつかあるのですが、リモネンやシトロネラルなどが含まれています。
一方の辛み成分は山椒が語源になっているサンショールがあります。
このサンショールには整腸効果が認められているのですが、同時に麻酔効果もあって舌が痺れた感じになります。
サンショールこそが山椒の味覚そのものと言っても良いかもしれません。
3.山椒の育て方
山椒は苗木を買って露地栽培で育てるのがおススメです。
なお、一般的な山椒には鋭いトゲがありますので、扱いには注意しましょう。
写真の山椒にも背後に鋭いトゲが何本も写っています。刺さるとかなり痛いですよ・・・
植え付けは冬に行います。
日差しの強いところは避けて、適度な湿気が保てる半日影で育てましょう。
4月頃に花が咲き、雌株にはその後実がなります。雌株は最初から実のような形の花ですが・・・
そして先ほども解説しましたが、雄株には実はなりませんので、花は花山椒として使ってしまっても構いません。
若葉は木の芽として楽しめますので、摘みすぎに気を付けながら使いましょう。
雌株の実は、夏には青く、秋になると赤く成熟してきます。
好みのタイミングで収穫して楽しんで下さい。
山椒の苗は、大概は雄雌が分かるように売られていますので、目的にあわせて購入して下さい。
また最近ではトゲの無いものもあるようですので、お子さまのいるご家庭ではそちらのほうが良いかもしれませんね。
4.粉山椒の作り方
山椒の雌株に実がなって、一部が色づき始めたら収穫しましょう。
そして山椒の実を風通しの良い日当で1週間ほど乾燥します。
この時に実が割れて種が飛び散ります。
しっかり乾燥させたら、丁寧に種を取り除いてから粉砕します。
スパイス専用のコーヒーミルか、ミルサーなどで適度な粗さにまとめます。
粉砕したものをお好みのふるいにかけて仕上げます。
まあ実際は、種は面倒であれば取り除かなくても良いですし、ふるいもかけずに大き目の皮などを取り除くだけでも構いません。
これで粉山椒の完成です。
是非挽きたてのフレッシュな香り、辛味を楽しんで下さい!
5.山椒を使った料理レシピ
ここまで山椒の特徴をいろいろな角度から見てきました。
山椒は葉も実も花も皮も、スパイスやハーブとして使われていましたが、葉や花は季節のもので使える時期が限られます。
また皮は自分で栽培しないと手に入らないですね・・・
そこでここでは、通年で楽しめる山椒の実(実山椒)や粉山椒を使ったレシピを紹介してみたいと思います。
今日の料理は和食系なので、日本酒や焼酎にはぴったりですが、山椒のおかげでスパークリングワインなどにも合わせられます。
あのピリッとした感じが合うんですよ…
5-1.いわしの丸干し煮つけ
まず1品目は、いわしの丸干しをチョイスしてみました。
鮮魚はちょっと面倒だなという方でも、この丸干しは調理が簡単でおススメです。
甘辛く煮付けたいわしに山椒の香りが食欲をそそります。
材料:1皿3尾
いわし丸干し 3尾 粉山椒 適量 本みりん 大さじ3 めんつゆ 大さじ1 日本酒 小さじ2 青ネギ 適量 |
(1)いわしの丸干しの腹を軽く開いて、はらわたを取り出す
(2)いわしを魚焼きグリルでさっと炙る
(3)ボウルに本みりん、めんつゆ、日本酒を入れ、炙ったいわしを5分漬け込む
(4)3を汁ごと鍋に移して強火で煮つける
(5)青ネギを刻んでおく
(6)いわしを皿に並べ、青ネギを散らして、上から粉山椒を振りかけたら完成!
5-2.冷奴の生姜実山椒添え
じつは、実山椒を食べたことが無い、記憶が無いという人はたくさんいます。確かにご家庭ではあまり使うことはないかと思います。
そんな方にはどシンプルな冷奴で、実山椒を直接味わって頂きたいと思います!
最初は実山椒で、次にショウガで、最後は山椒とショウガを混ぜて召し上がって下さい。
材料:1人分
絹豆腐 適量 実山椒 小さじ1 ショウガ 1片 大葉 1枚 めんつゆなど 適量 |
(1)絹豆腐の水気を切って、キッチンぺーパーで包む
(2)キッチンペーパーで包んだ豆腐を耐熱皿にのせ、電子レンジで1分加熱する ※加熱しすぎに注意
(3)取り出した豆腐のキッチンペーパーを新しいものに取り替え、冷蔵庫に入れて30分冷やす
(4)ショウガをすりおろしておく
(5)豆腐が冷えたら、キッチンペーパーを外して皿にのせ、大葉とショウガと実山椒をあしらう
(6)お好みの量のめんつゆをかけまわしたら完成!
5-3.ふきと油揚げの炒め煮
最後は懐かしい昭和の味を楽しみましょう。
最近ではスーパーで長ーいふきをあまり見かけなくなりましたね。スーパーのレジ袋にも入りきらない長さのふきを自転車で持ってかえるのは一苦労です(笑)
でもふきの水煮くらいは探せばあると思いますので、見つけたらさっと料理してみて下さい。
材料:2人分
ふき 適量 実山椒 大さじ1 油揚げ 1~2枚 醤油 大さじ1 みりん おおさじ1 日本酒 小さじ1 だし汁 100ml サラダ油 大さじ1 |
(1)ふきをあく抜きして下茹でし、水気を切る
(2)ふきを5cm程度に切りそろえる
(3)油揚げをザルに置き、熱湯をかけて油抜きする
(4)油揚げを細めに切る
(5)フライパンにサラダ油を熱し、ふき、油揚げを入れて炒める
(6)醤油、みりん、日本酒、だし汁、実山椒を加えて強火で煮込む
(7)色づきが良いところで火を止めて粗熱が取れるまでそのまま冷ます
(8)皿に盛りつけて完成!アレンジでしらす干しを加えても美味しいですよ!