クミン

クミンの入ってないカレーなんて。まさにスパイスの原点


クミン

クミンはとても古くから地中海沿岸で使われてきたスパイスで、他のスパイスと同様に薬としても用いられてきました。

エスニックな香りが特徴で、日本人が大好きなカレーの香りも、このクミンの香りがメインになっていますね。

ここでは昔から今に至るまで親しまれてきたスパイス「クミン」を、詳しく紹介していきます。

1.クミンの名前と歴史

2.千夜一夜物語でのクミン

3.クミンの香りや味

4.クミンの栽培

5.スパイスとしてのクミンの作り方

6.クミンを使った、とっておきレシピ

 

1.クミンの名前と歴史

英語名cuminは、元々はヘブライ語のkammonが、ギリシャ語のkyminonとなり、さらにそれがラテン語に転じて cuminum となったものが語源であると言われています。

ヘブライ語やギリシャ語としては、旧約聖書のイザヤ書28章、新約聖書のマタイによる福音書23章にそれぞれkammon、kyminonとして登場しています。

クミンはさらに時代をさかのぼった古代エジプトの医学書にも記述があります。それはエーベルス・パピルスと呼ばれる紀元前1550年頃に書かれた医学書(パピルス)で、神官文字で書かれていました。

エーベルス・パピルス
エーベルス・パピルス

その中に、お腹の病気を治す薬の材料などとしてクミンが登場しているのですが、紀元前16世紀という、今から3600年近くも前からクミンは使われていたのですから驚きです!

また古代エジプトと聞いて連想するのが「ミイラ」。クミンはその防腐剤としても使われていたとか。他にも古代ギリシャや古代ローマでも、家庭用のスパイスとして用いられていたようです。

さて、皆さんはこのクミンの和名をご存知でしょうか?知っているなら相当なマニアに違いない…

クミンは日本名「馬芹」(ばきん、うまぜり)と呼ばれています。中国での呼び名から来ているように思えますが、中国ではインド系の呼び名「孜然」(ズィーラン)を主に使っているようです。

 

2.千夜一夜物語でのクミン

クミンは、千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)の第27夜~第28夜にも重要なアイテムとして登場します。

シナ王の執事の話

シナ王の執事は、ある宴会に行ったとき、おいしいクミン料理(注)が出たので、みなおいしく食べていたところ、一人の若者だけがどうしてもそれを食べなかった。

みなが理由を尋ねると、若者は「手を石鹸で40回、炭酸で40回、ショウガで40回、合計で120回洗った後でなければクミン料理は食べません。」と言った。

そこで主人がそれらを召使にもってこさせたので、若者は手をあらい、何かを怖がりながら、不機嫌そうに食べ始めた。

しかし、みながその若者の手を見ると親指がなかったので、怪我でもしたのかと聞いたところ、手足全ての親指がないと言って、若者は手足を見せた。それから若者は親指のない商人の話を始めた。

※クミン料理:和訳では主にロズバジャ、アラビア語でジルバジャといい、ジルはクミンのこと。クミンで味付られたシチューのような肉料理であると思われる

アラビアンナイト

若者の父は、ハルン・アル・ラシードの時代のバグダッドの大商人であったが、酒や音楽に散在し、若者は財産がほとんどない家庭に育った。

父の死後、若者はバグダードで貧しい商人となっていたが、たまたま高額商品の買物に市場に来た美しい女性に恋をしてしまった。その女性は、何と当時のカリフであるハルン・アル・ラシードの妻ズバイダの侍女で、買物を担当する女性であった。恋い焦がれながらも、侍女と自分の立場が全く違うことに若者は失望しきっていた。

しかし、恋に落ちていたのは若者だけではなかった。むしろ侍女のほうが若者に恋をしていたのだった。しばらくすると、若者は侍女の使う宦官の手引きと侍女の機転をきかせた対応で、何とかズバイダの宮殿に忍び込むことに成功した。そしてズバイダ妃に人柄を認められ、晴れてその侍女と結婚することとなった。

ところがこの若者は、侍女との初夜の前に食事で出されたクミン料理を素手でたらふく食べたにも関わらず、手を洗わずに初夜に臨んでしまった。

寝床で侍女は、若者の手についたクミンの匂いに気づき、手も洗わない無神経さに激しく怒り、鞭打ちにした後も怒りが収まらず、若者を捕らえて両手両足の親指を斬ってしまった。

若者が「今後、手を石鹸で40回、炭酸で40回、ショウガで40回洗った後でなければ、クミン料理は食べない」と誓ったところ女の怒りはようやく収まり、二人は妃からもらった大金で家を買い、一緒に暮らすことになった。<FINE>

えーっと、これは一体… めでたし、めでたし、なのでしょうか?

それからこの話はクミンがとても臭いという設定なのですが、これは侍女がクミンが嫌いだからと理由が多分にあるのではないかと思ってしまいます。 そんなに悪臭ではないと思うのですが…

とはいえ、クミンが中心となったお話しでした!

 

3.クミンの香りや味

先ほどの千夜一夜物語にもありましたが、クミンは特徴のある香りをもっています。少しきつめのあのカレーの香りで、炒るとさらに良い香りが出てきます。

クミン
クミンのアップ

中世ヨーロッパでは、クミンには男女と鶏(鶏肉)を家庭に結びつけておく力があると考えられていました。そのため、結婚式には男女ともにクミンシードをお守りとして身に付けていたそうです。

その意味をまじめに考察してみるとこんな感じでしょうか。

・夫はクミンと鶏肉が絶えず家庭にあるように、しっかり働いてお金を稼ぐ。
・妻はクミンと鶏肉を使って、家族が楽しく食事できるような美味しい料理を作る。

たしかに幸せそうな家庭が想像できますね!

中世ヨーロッパのカトリック教会の荘厳な建物を想像してみて下さい。当時の婚約式や結婚式はあのような教会の戸口で、司祭によって行われました。もちろん民衆の面前です。

その新郎・新婦がクミンの入った小瓶や袋を携帯していたなんて!あの建物にクミン、いやカレーの香りなんて、結婚式のイメージがちょっと変わりますよね。

さて、クミンの味のほうはどうでしょう。フェンネルよりも小ぶりなクミンシードを噛むとほのかな苦みとピリッとした辛みを感じます。そしてその香りが口内に広がり長い時間とどまります。

クミンだけでは少しきつい香りや味ですね。やはりスパイスとしてお肉などと一緒に料理することで、クミンの良さを知ることができるようです。そして使う量は、ほどほどにということを忘れないでおきましょう。

 

4.クミンの栽培

クミン

クミンは気温が安定して15度を超えるようになる4月頃に種まきを行います。

寒冷地で4月になっても15度を下回るところでは、ポットに種まきを行いますが、移植を嫌いますので、プランターなどへの直まきがおすすめです。

クミンは日当たりが良く、水はけが良い弱アルカリ性の土を好みます。種まきの2週間ほど前に苦土石灰を施して、種まき前にも元肥をやっておきましょう。

乾燥を嫌いますので、水はたっぷり与えて下さいね。

発芽後は、適宜間引きをして、株間が30cm位になるようにしておきましょう。

ポットの場合は、高さ5cmくらいになったら2、3株残して間引きを行い、10cmくらいになったら、最新の注意を払って定植しましょう。直まきと同じように株間30cmを目安として下さい。

7月頃に、高さ30cmくらいまで成長すると薄いピンクか白の花を咲かせます。

クミンが枯れてきて、最初の種がはじけそうになるころ、株ごと切り取って収穫します。

 

5.スパイスとしてのクミンの作り方

収穫されたクミンの株を束ねて、完全に乾燥するまで屋内に吊るしておきます。

全体が茶色くなって乾燥したら、束ごと大き目の紙袋に入れ、その紙袋を破かないように棒で叩きます。叩くことによって、クミンの種が房から出てくるようになります。

種が落ちきったら、種を集めて気密性の高い容器に入れて保管します。

 

6.クミンを使った、とっておきレシピ

ここでは、クミンを使ったレシピを3つ紹介します。本当はカレーを紹介したいのですが、カレーこそいろんなレシピがあってなかなか決められず、カレー以外からチョイスすることにしました!

最近、あちこちで目にするあのキャロット・ラペのレシピも紹介します。

6-1.シュラスコ風ステーキ

6-2.キャロット・ラペ

6-3.豚肉とナスのクミン炒め

 

6-1.シュラスコ風ステーキ

ブラジル料理として有名なシュラスコ。今回はグリル料理として家庭でも簡単にできるレシピを紹介します。

シュラスコ風ステーキ

材料:5人分

牛肉 1キロ
ウスターソース 小さじ2
ニンニク 3片
ライム 2個(絞る。無ければレモン1個)
赤ワインビネガー 小さじ2
クミンシード 小さじ1
チリペッパー 小さじ1
玉ねぎ 1/2個
オリーブオイル 小さじ2
<ソース>
玉ねぎ 1個
トマト 1個
キュウリ 1本
オリーブオイル 大さじ4
白ワインビネガー 大さじ4
塩 少々
コショウ 少々

(1)牛肉を8個に切り分ける。

(2)ニンニク、玉ねぎを刻み、ボウルに入れる。

(3)ボウルにウスターソース、ライム汁、ビネガー、クミン、チリペッパー、オリーブオイルを加えて混ぜる。

(4)牛肉を加えて良く刷り込む。

(5)すべてをジップロックに入れ、冷蔵庫で1日寝かせる。

(6)調理の1時間前に冷蔵庫から出して、室温に慣らす。

(7) ソースを作る。玉ねぎ、トマト、キュウリをみじん切りにする。

(8) オリーブオイル、ビネガー、塩コショウと良く混ぜる。

(9)グリルパンで、牛肉を片面3分ずつ焼く。

(10)切り分けて、ソースと一緒に提供する。

 

6-2.キャロット・ラペ

フランス家庭料理の定番ということで最近にわかに注目を集めているキャロット・ラペ。日本語にしてみると「ニンジンおろし」でしょうか。そうです、とても簡単にできるのです。

キャロットラペ

材料:4人分

にんじん 1本
クミン 小さじ1
白ワインビネガー 大さじ1
オリーブオイル 適量
塩コショウ 少々
ドライパセリ 適量

(1)にんじんを細めの千切りにする。千切り器を使ってもかまいませんが、その場合は細めに切れるものを使って下さい

(2)クミンとドライパセリ以外の調味料を全て混ぜ合わせる

(3)にんじんにかけ回し、良くなじませる

(4)冷蔵庫で1時間寝かせる

(5)皿に盛りつけ、ドライパセリを振って完成!

★レシピの裏ワザ★ 調味料に白ワインビネガーと相性の良いディジョンマスタードを少量加えると、より大人のキャロット・ラペが楽しめます!また味にメリハリが欲しい場合には、上から粗挽きコショウをたっぷりかけて召し上がって下さい。

 

6-3.豚肉とナスのクミン炒め

年々暑くなるような気がする日本の夏。夏を乗り切るためにもしっかりとした食事が大切です。そんな方に栄養豊富な豚肉とキノコ、そして夏野菜のナスを使ったメニューを紹介します。

豚肉とナスとシメジの炒め物

材料:4人分

豚肉こま切れ 300g
ナス 中2本
しめじ 1パック
クミンパウダー 小さじ1/2
塩 少々
酒 大さじ1

(1)ナスを乱切りにして、油を引いたフライパンでソテーする

(2)ナスに焼き色がついたら塩を振って皿に取る

(3)フライパンに油を足し、豚肉としめじを炒める

(4)火が通ったら、酒と塩を振り、軽く炒めてからナスを戻す

(5)クミンパウダーを振り、全体を絡めたら完成!


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