シナモンは、その甘い香りと独特な見た目から良く記憶されているスパイスです。
シナモンは明らかに他の種子・果実系スパイスや根茎系スパイスと違って、何かシートのようなものがクルクルと巻かれて乾燥した状態になっています。
また香りも独特で、スパイスという辛いイメージからはほど遠い甘ったるい香りを持っています。
シナモンがカレーに使われているのは良く知られていると思いますが、他にもスイーツやお茶にも幅広く使われていますね。
それでは、このシナモンの歴史や特徴を詳しくみていきましょう。
1.シナモンの名前と歴史
シナモンの名前の由来は、英語cinnamonをそのまま読んだものですが、英語のcinnamonはギリシャ語のkinnamonが語源になっているようです。
またこのkinnamonはへブル語のqinnamonが語源になっているようですが、地中海を舞台に海洋交易で栄えたフェニキア人経由で伝わったと言われています。
さて、ひとくくりにシナモンと呼んでいますが、シナモンとして利用される樹木にはいくつかの種類があります。シナモンに種類があるなんて中々気づきませんよね!
A.セイロンシナモン(スリランカ)
B.カシア(中東、アフリカ)
C.シナモン・タマラ(インド)
D.シナニッケイ(中国)
E.ニッキ
シナモンは、主なものでこの5種類があります。一般的にシナモンと言う場合には、正しくはAのスリランカ(セイロン島)原産の『セイロンシナモン』を指していて、このシナモンは木の樹皮を使用します。
日本ではEのように、古来『ニッキ』と呼ばれてきたシナモンがあって、こちらは日本肉桂という同じ仲間の木の根っこを使ってきました。
違いと言えば、日本のニッキは、何となくシナモンより辛い感じがしますよね。
ただ今日では、ニッキと言ってもAやBを使っているところも多いそうで、なかなか区別がつきにくくなっています。
伝統的なニッキの流通量が少ないことが原因だとも言われていて、問題は簡単ではなさそうです。
Bのカシアはシナモンの仲間ですが、Aのセイロンシナモンとは原産国が異なっていて、成分も若干違いします。
ところが、このカシアは古代エジプト時代から存在していて、記録を見るとこのカシアをシナモンと呼んだり、シナモンをカシアと言っていたり、巷ではひとくくりに見られていたのではないかと考えられます。
この写真のように、並べてみると外見も少し違いますね。セイロンシナモンのほうが色が薄く、カシアの方が濃い色をしています。
香りもセイロンシナモンは甘くやさしい香りですが、カシアは鼻にツンとくる甘みと辛みの混在した香りがします。
Cのシナモン・タマラは、樹皮ではなく葉を使用するタイプで、かなり違った種類の「シナモン」です。
Dのシナニッケイは、別名がカシアと言う通りBのカシアに似ています。
香りがあまり強くありませんが、薬用として解熱鎮痛効果が高いと言われ、漢方に広く使われています。
さて、このように多くの種類があるシナモンですが、非常に古くから使われていたスパイスの一つでもあります。
古代エジプトでは紀元前2000年頃からいわゆる「シナモン」があったようですが、大変高価なものであったので、王への献上品などに使われていたそうです。
へブル語が語源になっていることから想像がつきますが、旧約聖書にもモーセの出エジプト記にシナモン(肉桂)が早々と登場し、ソロモンの書いた箴言などにもシナモン(桂皮)の記述があって、この地方では良く知られていたことが分かります。
紀元前5世紀の歴史家ヘロドトスは、エジプトのミイラづくりにカシアが用いられていたことを書いています。また紀元前1世紀の歴史家ディオドロスも、エジプトのミイラづくりにシナモンが用いられていたと書いています。
さきほども少し触れましたが、古代エジプトではシナモンとカシアの混同がみられるようですので、二人とも同じシナモンを指していると思われます。
またミイラには、樹皮だけではなく、枝も根も葉も使っていたそうです。
樹木全体に香りがありますので、納得ですね!
中国では、後漢時代(2世紀前半)に書かれた「神農本草経」に牡桂、菌桂として記載があって、漢方薬として用いられていたことが分かります。
シナモンは日本に8世紀には入ってきていて、正倉院の宝物リストにも「桂心」という名前で記載があります。どうやら漢方薬として入ってきたようですね。
なお樹木として入ってきたのは、ずっと後の江戸時代になってからと言われています。
さて、中世に至るまで、シナモンの原産地は西洋には明かされていませんでした。
ヘロドトスの記事から、紅海あたりからエジプトの市場に運ばれてくるということは分かっていましたが、原産地の特定までには至りませんでした。
それどころか、第7回十字軍にルイ9世と共に従軍したジャン・ド・ジョアンビルは、ナイルの源流から網で引き揚げられているらしい、という話まで本気で報告しています。
元々シナモンの採集は謎めいていて、ヘロドトスは中東でのシナモンの集め方として、大きな鳥がシナモンの枝で作った巣を探して、その巣を壊して集めるという方法を紹介していたのです。さてさて。。。
そして13世紀後半になって、ようやくスリランカが原産国であると報告されるようになり、そこからスリランカのシナモン生産と貿易は、ポルトガル、オランダ、英国といった国の支配下に置かれるようになりました。
2.シナモンの香りや味
皆さんご存知の通り、シナモンは甘く強い独特の香り、そしてかすかな辛みをもっていて、古代ローマやギリシャの時代から、その香りを活かした料理や、ワインの風味づけに使われてきました。
アジアでは茶に加えますし、ヨーロッパではパンやお菓子、例えばアップルパイやシナモンロールにも使われます。
日本ではアメや八ッ橋(本来ニッキですが…)に使われていますね!
シナモンの香り成分は、シンナムアルデヒド(桂皮アルデヒド)といって、桂皮から取られるシナモンオイルの主成分です。
化学式はC9H8Oで、化学合成が可能です。
殺菌効果もありますが毒性が低いため、作物の根に用いられることがあります。
また犬や猫がこの香りを嫌うとも言われていますが、私は試したことがありません…
3.シナモンの育て方
シナモンは寒さに弱いので、冬に最低気温が10℃を切る地域では、屋外の栽培は難しいところです。
とは言え、鉢植えにして屋内に取り込める環境であれば、ある程度の高さに成長するまでは育てることができます。
後は剪定しながら、サイズを維持するようにしましょう。
さし木で増やしますが、6月~7月頃が最適です。
枝先10センチ程度を切り、水に1時間ほど漬けてから発根剤を切り口につけます。
その後、湿らせた赤玉土に挿して日陰に置いて置きます。蒸れないようにビニール袋をかぶせておくと良いでしょう。
発根までは時間があります。水分が蒸発してしまわないよう注意しながら育てましょう。
1~2ヵ月もすると根が出てきて、2ヵ月経つ頃にはビニールを外して外気にならし、小さな鉢に植え替えます。用土は観葉植物用のものを使用するといいでしょう。
冬は温度に気を付けて、水分は乾かし気味にしましょう。春になって4月頃には成長しますので、化学肥料を2ヵ月に1回程度与えて下さい。肥料は9月頃まで与えて下さい。
生育期には日当たりの良い場所で育てましょう。出来るだけ長い時間日に当てて下さい。
残念ながら、鉢植えでは樹皮を収穫するまでには成長しません。でも植物全体から良い香りがしますので、その芳香を楽しむようにしましょう。
4.スパイスとしてのシナモンの作り方
私たちが見かけるシナモンは、スティックか粉末のどちらかですね。
スティックは、他のスパイスとは違って葉巻のような独特な存在感があります。
ところが製法は至って簡単です。
シナモンは主に枝の樹皮を収穫しますが、ナイフを使って枝の外側と内側を分けて剥いでいきます。
外側の皮を並べて、そこに内側の皮を入れ、包んでいきます。
1メートルほどのスティックが出来あがれば完成。
そのまま乾燥させます。
これで出来上がりです。
シナモンの粉末用には、太い幹の樹皮が使われることが多いようですね。ガバっと剥いで、粉々に。
まさに大量生産です。
5.シナモンを使った料理レシピ
シナモンには、甘さをさらに官能的に引き立てる効果があります。和洋問わずスイーツにたくさん使われていますが、そういう根拠があるのです。
ここでは、そのようなシナモンの役割が引き立つレシピを3つご紹介します。
どれも家庭で楽しめるレシピなので、どうぞチャレンジしてみて下さい!
5-1.パンプキン・スープ
シナモンの、甘味のある料理に使うと、その甘味をさらに引き立てるという特徴。これを最大限に活かしたいと思います。
そこで、まずはじめのレシピとして野菜の中でも甘味の際立つカボチャを使ったスープを紹介します。
材料:4人分
カボチャ 1/4個 玉ねぎ 1/2個 牛乳 適量 バター 適量 塩コショウ 少々 シナモンスティック 1本 乾燥パセリ 少々 |
(1)カボチャの種とわたをスプーンで取り除き、適当な大きさに切る。
(2)スチームクッカーなどに入れ、電子レンジで5分ほど加熱する。
(3)加熱後、そのまま5分ほどおいて蒸し、柔らかくなったら取り出す。
(4)玉ねぎをみじん切りにする。
(5)フライパンにバターを溶かし、弱火で玉ねぎを茶色になるまで炒める。
(6)フライパンにカボチャとシナモンスティックを加え、軽く炒める。
(7)シナモンスティックを取り除き、ミキサーにカボチャと玉ねぎ、牛乳を入れてスープ状にする。
(8)鍋に移して、シナモンスティックを戻し、塩コショウで味を調えながら温める。
(9)器に入れパセリを少々振って、完成。
5-2.シナモンロール
最近ではスタバやタリーズなどにも置かれていますが、シナモンの風味がダイレクトに味わえるお菓子として人気ですね!
ここでは、ご家庭でもできる簡単な作り方としてホームベーカリーを使ったレシピをご紹介します。
材料:約12個分
<生地> 強力粉 320g 薄力粉 80g 牛乳 1カップ 砂糖 40gカップ 無塩バター 40g 塩 5g 玉子 2個 ドライイースト 5g <フィリング> 砂糖 60g シナモンパウダー 小さじ2.5 無塩バター 20g(温めておく) <アイシング> 無塩バター 50g クリームチーズ 20g フロストシュガー 50g バニラエッセンス 小さじ1/2 塩 少々 |
(1)生地の材料をホームベーカリーに投入して、1次発酵まで行う。
(2)1次発酵終了後、生地を取り出してすばやく丸め直す。
(3)生地に濡れ布巾をかけて約15分置く(ベンチタイム)
(4)麺棒などで生地を縦30cm横40cmに伸ばす。必要であれば、強力粉で軽く打ち粉をする。
(5)フィリングを混ぜ、全体に塗る。
(6)手前からきつめにしっかりと巻いていく。
(7)スケッパーで12等分に切り、アルミカップなどに載せて、上から軽く押さえつける。カップがない場合は、オーブン皿にオーブンシートを敷いてその上に載せる。
(8)上にラップと濡れ布巾をかけ、2次発酵させる。
(9)オーブンを190℃に予熱する。
(10)2次発酵して全体がふっくらしたら、オーブンに入れ、190℃で15分ほど焼く。
(11)焼きあがったら、熱いうちにアイシングを塗って完成。
★レシピの裏ワザ★ ホームベーカリーのドライイーストを使ったパン生地メニューを使う。慣れるまで、分量はホームベーカリー指定分量に合わせたほうが失敗しないと思います。それから、麺棒はガス抜き麺棒を使うときれいに形が整います。
5-3.アップルパイ
アメリカでは家庭料理の定番です。どの家にもその家のアップルパイがあります!今回は、パイ生地から作るレシピをご紹介します。レシピでは中力粉を使いますが、無ければ強力粉と薄力粉を半々で合わせて使って下さい。
材料:22センチ皿1個分
<パイ生地> 中力粉 300g 無塩バター 300g 塩 小さじ1 砂糖 小さじ2 サワークリーム 100ml <フィリング> リンゴ 6個から8個 レモン汁 小さじ1 砂糖 120ml 中力粉 小さじ3 オールスパイス 小さじ1/4 ナツメグ 小さじ1/4 シナモン 小さじ1/2 バニラ 小さじ1 <溶き卵> 玉子 1個 生クリーム 小さじ1 |
(1)ボウルに中力粉と塩、砂糖を入れ良く混ぜる。
(2)バターを加え、手でバターをつぶしながら滑らかになるまで混ぜる。
(3)中央にくぼみを作り、サワークリームを加えてなじむまで良く混ぜる。
(4)生地を2等分し、皿の形に整え、中力粉をまぶしてラップする。
(5)冷蔵庫で1時間ほど寝かせる。
(6)リンゴを3センチ角程度に切って、レモン汁をかけておく。
(7)ボウルに砂糖と中力粉、シナモンなどのスパイス類を混ぜて、切ったリンゴと合わせる。
(8)バニラを加える。
(9)オーブン皿にシートを引き、オーブンを200℃に予熱する。
(10)冷蔵庫から生地を1枚取り出し、10分ほど室温になじませる。
(11)中力粉を打ち、30cmほどの円に伸ばす。
(12)22cm程度のパイプレートに乗せ、縁に生地を軽く押し付ける。
(13)フィリングを中央が高くなるように乗せる。
(14)もう1枚の生地を同じサイズに伸ばし、上に乗せ、下の生地と縁を押し合わせていく。
(15)玉子と生クリームを合わせ、刷毛で全体に塗る。
(16)上の生地に、包丁で放射状に6本~8本の切れ込みを入れる。
(17)オーブン皿に乗せ、200℃で約20分焼く。
(18)焼き色がついてきたら180℃に下げ、45分から1時間、パイが金色になるまで焼く。
(19)焼きあがったら、1時間ほど室温で冷ます。
(20)室温程度になったら完成。