バニラ

バニラの濃厚な甘い香りとトトナック族の愛の伝説


バニラ(英語表記Vanilla)は濃厚な甘い香りを放つスパイスです。バニラアイスやプリンの香りとしてわたしたちにも馴染みがあります。

このバニラですが、実は作るのが大変で、収穫から数カ月かかってやっと出荷できるという何とも気の遠くなる工程を経て流通しています。

そんなバニラのあれこれを伝説の誕生秘話も交えながらみていきましょう!

1.バニラの名前と歴史

2.バニラの香りや味

3.バニラの育て方

4.バニラシードの作り方

5.バニラを使った料理レシピ

 

1.バニラの名前と歴史

バニラはメキシコを中心とした中南米原産のスパイスです。

16世紀にメキシコを征服したスペイン人によってヨーロッパに広められました。バニラの名前、Vanillaもスペイン語の「vaina」(さや)に由来すると言われています。

バニラのさや

このバニラですが、メキシコにはバニラ誕生の伝説が残っていますので、ご紹介しましょう。

昔むかし、今のメキシコのベラクルーズという町に、トトナック族のテツツリ三世という族長がいました。

やがて彼と妻はかわいい女の子を授かります。彼らはその子があまりにも可愛いので、将来つまらない人間の嫁にやるのはもったいないと考えて、穀物と命の女神トノカヨフアの神官にしてしまいました。この女の子はモーニングスターと名付けられ、神殿で暮らし、その人生を女神への奉仕に捧げることとなりました。

ある日、モーニングスターが森で花を摘んで帰ろうとした時、ヤングディアーという若者に出会います。彼はモーニングスターの美しさに一目ぼれしてしまいます。

しかし、モーニングスターは神官ですから恋や結婚は禁じられていました。ヤングディアーは、その事を理解していて、彼女と恋に落ちれば死が待ち受けていることに悩みました。そこで毎朝、モーニングスターが森へ花を摘みに来るのを、繁みの中からじっと見つめていたのです。

やがてヤングディアーはモーニングスターへの想いを抑えきれなくなり、彼女をさらう決心をしました。ある日、深い霧の立ち込める朝、ヤングディアーは森でモーニングスターを待受け、彼女の前に飛び出し愛の告白と彼の決心を伝えます。そして彼女の腕をつかみ森の奥へと逃げて行きました。モーニングスターは非常に驚きましたが、彼女もまた彼の魅力に捕えられ、喜んで彼と共に行くことにしました。

すぐに神殿の人たちは彼らの逃避に気づき、追っ手を差し伸べます。ヤングディアーとモーニングスターは逃げて逃げてやっと最初の山に入り込んだ時、洞窟から恐ろしい魔物が火を噴きながら出て来て、彼らを追い返そうとしました。しかし引き返してしまっては、追ってくる神殿の兵たちに捕まってしまいます。

そうこうしている間に、神殿の兵たちが追いつき、ヤングディアーを捕らえて首を刎ねてしまいました。そしてそばにいたモーニングスターも同じ運命をたどったのです。

彼らの心臓は持ち帰られて、女神への犠牲として祭壇で焼かれ、彼らの体は深い谷に投げ捨てられました。

彼らが殺されて血を流した場所では、すぐに草が枯れ始めました。そして数か月後、今度は一本の木がぐんぐん成長し、あっという間に数メートルの高さに成長しました。さらに、後を追うように一本の蔓が伸び始め、木の幹や枝にびっしりと巻きつきました。これは人々の間でも噂になりました。

そしてある朝、その蔓の先にたくさんの黄緑色のさやがつきました。そのさやが乾くと何とも言えない甘い香りが漂ってきたのです。それは「バニラ」でした。それは女神に捧げた最も良い香料よりも素敵な香りでした。

バニラ伝説の碑(メキシコ・ベラクルス州)

人々は気づいたのです。ヤングディアーとモーニングスターの血が生まれ変わったのだと。そしてこの時からバニラは女神への捧げものとなり、さらにトトナック族から世界中の人々への捧げものともなったのです。

…何とも壮絶なお話しでしたが、バニラのあのしつこいまでの甘い香りを想うと、彼らの愛の深さが感じられるようですね。

かつて中南米には、ショコラトというホットドリンクがありました。そうです、チョコレートは元々カカオから取れる豆と水を混ぜただけで、砂糖も入れずに薬の代わりに飲まれていたのですね。そもそもショコラトという名前が「苦い水」という意味なのです。

その後、ヨーロッパに持ち込まれて砂糖やバニラなどが広まって、あの固形のチョコレートが作られるようになったのです。

このバニラが無かったら、日本のバレンタインデーも無かったのかもしれません。

 

2.バニラの香りや味

バニラ

バニラの香りの元となっている成分は、バニリンです。濃厚な甘い香りを放ちますが、収穫後に手間暇をかけて処理して初めて香料として使うことができます。

私たちの生活の中で、バニラというと何を思い浮かべますか?アイスクリームという方が多いかもしれませんね。あとはケーキとかクッキーとかでしょうか。

天然のバニラはさやの状態で作られますので、店頭でもさや入りで売られています。またバニラオイル、バニラエッセンスという形でも手に入ります。

その中にバニラエキストラクトと書いてあるものがありますが、これは人口香料を一切使わない天然もののバニラエッセンスを指します。ということは、他のものは多かれ少なかれ人口香料が入っているということですね。

後のバニラビーンズの作り方でも書きますが、とにかく天然ものは手間がかかります。要は値段が高くなってしまうのです。日本でもあのバニラビーンズのさやが2本入りでいったいいくらするのかと。。。ご存じない方はびっくりすると思います。

そのために人口香料が開発されて、そのような商品にも含まれるようになったわけです。奥が深いですねえ。

 

3.バニラの育て方

日本でもバニラは観葉植物として販売されています。しかしながら大きく育てないと花をつけないため、バニラビーンズの収穫はとても難しいと言われています。ここでは観葉植物としての育て方をご紹介します。

6月以降の高温多湿の時期が植え付け、植え替えに適しています。吊鉢にして枝を垂れさせるか、支柱にまきつけるように育てます。

バニラビーンズ

直射日光を避けた明るいところで育てます。土は常に湿った状態を保つように心がけましょう。月に1~2回液体肥料を与えるようにします。

冬は暖かいところで、土も夏よりは少し乾かし気味にしておきます。空っ風などに当たらないよう、室内も湿気を保つようにして下さい。

6月頃にさし木で増やせます。水コケを巻きつけて挿すようにしましょう。

 

4.バニラビーンズの作り方

バニラのさやの中

バニラのさやが黄色くなる前、まだ青いうちに収穫します。そしてここから大きいさやのものであれば数カ月かかるキュアリングという作業が行われるのです。

まず大きさによってさやを分け、水で洗ってほこりを落とします。そして約65℃の湯に大きさに従って一定時間浸します。たとえば10cm程度のさやは2分間です。

その後、さやが熱いうちに厚めの布にくるみ、木の箱に入れておきます。そしてさやが茶色みがかって少し甘い香りがしてくるまで、2日~3日待ちます。

さやが茶色くなったら、日中の一番暑い時間帯に天日干しします。これを1日3時間、10cmのさやの場合は1週間程度繰り返します。天日干しが終わったら木の箱に戻しておきます。

天日干しが進むと、さやがしわしわになって軽くなり、香りも増してきます。この段階で、風通しの良い部屋に移して、10cmのさやであれば10日ほど乾燥させます。

この乾燥が終わるとまた木の箱に油紙に包まれた状態で2ヵ月ほど寝かされ、バニラビーンズが完成します!

 

5.バニラを使った料理レシピ

バニラを使うレシピということで、今回は甘いもの特集のようになっています。

見た目が使い勝手悪そうなバニラですが、実は調理では簡単に使うことができるのですよ!

5-1.クレームブリュレ

5-2.カスタードプリン

5-3.バニラシュガートースト

 

5-1.クレームブリュレ

クレームブリュレ

最初に紹介するレシピはクレームブリュレです。名前からも想像できますが、生クリームがベースのスイーツです。

そしてバーナーで焦げ目をつけるという、楽しい作業もありますよ!

材料:ココット5個分

卵黄 3個分
牛乳 120cc
生クリーム 180cc
グラニュー糖 30g
バニラビーンズ 1/3本
グラニュー糖 

(1)耐熱ボウルに卵黄とグラニュー糖を入れ、混ぜ合わせてグラニュー糖を溶かす

(2)鍋に生クリーム、牛乳、バニラビーンズ(さやごと)を入れ、弱火で加熱する

(3)少し熱いくらいまで加熱したら、1のボウルに鍋の中味を少しずつ混ぜながら加えていく

(4)オーブンを150℃に予熱し、別に湯を沸かしておく

(5)3を目の細かいこし器でこしてから、ココットに注ぐ

(6)ココットを深めの耐熱容器に入れ、ココットの半分くらいの高さまで熱湯を注ぎ、オーブンで約30分焼く

(7)ココットの表面がプルプルの状態になったら、取り出して室温まで下げてから冷蔵庫でよく冷やす

(8)冷蔵庫から取り出したココットの表面にグラニュー糖を生地が全て隠れるように敷き詰めて、バーナーで焼き色をつける

(9)もう一度冷蔵庫で冷やして完成!

 

5-2.カスタードプリン

次にご紹介するのは、クレームブリュレと違って牛乳がベースとなっているカスタードプリンです。

ほぼ生クリームか牛乳かの違いだけですが、まったく異なる食感のスイーツです。

材料:ココット5個分

全卵 2個
卵黄 1個
牛乳 200cc
生クリーム 100cc
砂糖 50g
バニラビーンズ 1/3本
カラメルソース用砂糖 30g

(1)鍋にカラメルソース用の砂糖と水小さじ2を入れ、沸騰させる

(2)泡が小さくなって焦げそうになったら水小さじ1を加える

(3)熱いうちにココットに均等に注いでおく

(4)ボウルに全卵と卵黄を入れて、軽く混ぜる

(5)鍋に牛乳、生クリーム、砂糖、バニラビーンズを入れて弱火で加熱する

(6)少し熱いくらいまで加熱したら、4のボウルに鍋の中味を少しずつ混ぜながら加えていく

(7)6を目の細かいこし器でこしてから、ココットに注ぐ

(8)大きめの鍋にココットが半分浸かる程度の水をはり、ココットを並べてフタをし、弱火で15分~20分ほど蒸す

(9)ココットをゆすっても表面が固まっていれば、粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やして完成!

 

5-3.バニラシュガートースト

バニラシュガートースト

最後に紹介するのは、バニラシュガートーストです。まずはバニラシュガーを作って、それをトーストにトッピングして楽しみましょう!

材料:2人分

バニラビーンズ 2本
グラニュー糖 200g
食パン お好きなだけ
バター 適量

(1)バニラシュガーを作ります。適当なビンにグラニュー糖を入れ、バニラビーンズをさやごとグサッと挿しておきます。日を追うごとにバニラの香りがグラニュー糖にうつります

(2)食パンを表面がこんがりするまで焼きます

(3)焼きあがったパンにバターを薄く塗って、1のバニラシュガーをたっぷりかけて完成です!


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