ターメリックの日本名はウコン。近年、「ウコンの力」などでも知名度があがりましたが、あの黄色い粉末がターメリックです。もしかしたら、ターメリックは少し苦いという印象があるでしょうか…
このスパイスの歴史は古く、栽培が始まったのは紀元前にさかのぼります。またスパイス以外にも染料という用途があり、染料としても長い歴史を持っています。
さあ、そんなターメリックを詳しくみていくことにしましょう。
1.ターメリックの名前と歴史
ターメリックは東インドが原産と言われ、紀元前から栽培されてきました。インドでは、アーユルヴェーダや料理に使われたほか、さらに古いシッダ医学でも生薬として使われたと言われています。
このシッダ医学の起源は現在から1万年以上前にさかのぼるとも言われていて、インド最古の医学です。そしてアーユルヴェーダでも古代ギリシャ発祥のユナニ医学でもターメリックは薬として用いられました。
このターメリック、英語のTurmericという名前ですが、数多くの学者が調査しているにも関わらず、起源が特定されていません。中世英語の「turmeryte」ではないかとか、ラテン語の「terra merita」ではないかなどと言われましたが、証拠がみつかりません。
最近では、元からターメリックにとても近い名前で呼ばれていたらしい、というのが定説となっています。実際にアフガニスタンなどで、とても近い名前で呼ばれているところが残っているようです。
ターメリックは中国で「鬱金」(うっこん)と呼ばれていました。これは、鮮やかな黄色という意味ですが、病気で重くなった気分を晴らして爽快になるという意味もあるようです。この鬱金が日本の琉球を経由して本州に伝播する過程でウコンと呼ばれるようになったようです。
日本でターメリック、つまりウコンと言うと、春ウコンと秋ウコンがあります。スパイスとして使われるのは苦みが少なくややオレンジがかっている秋ウコンです。ウコンの力に入っているのも秋ウコンです。
春ウコンは姜黄とも呼ばれており、秋ウコンよりも苦みが強い特徴があります。漢方での「鬱金」(ウコン)とは秋ウコンか春ウコンの塊根部分を指します。どちらも同じ名前です。根茎はいずれも姜黄と呼ばれます。ちょっとややこしいですね…。実際に春ウコンの健康食品も売られていますので、余計混乱しそうです。
東アジアの歴史で見ると、中国では李時珍の「本草綱目」に鬱金として記載があります。そして日本では例の「本草和名」に鬱金として記されています。江戸中期に寺島良安が編纂した「和漢三才図絵」には、ウコンという名前で登場しています。この和漢三才図絵には琉球から輸入する以前は、シャム(現在のタイ)からウコンが運ばれてきていたという記載があります。
現在ターメリックは、日本では主に沖縄で栽培されていて、平安時代に中国から琉球にウコンが伝わって以来の伝統があります。琉球では不老長寿の薬として重宝され、王朝の専売品となっていました。沖縄では「うっちん」とも呼ばれていますね。
その後、室町時代、江戸時代を通じて全国に広まり、幕府が栽培を奨励したこともあって庶民にまで広まっていきました。実際に江戸では徳川吉宗が「麻布御薬園」で栽培していたそうです。
私たちが一番目にするターメリックを使ったものと言えば、漬物の「たくあん」でしょう。たくあんのあの黄色はターメリックを使ったものなのです。意外と身近にありましたね。
また漢方としての効能も広くしられていて、ウコンの力にもあるように、肝機能向上や二日酔い防止などの効果があると言われています。挙句の果てにはウコンハイなどと言って、ウコンを焼酎や泡盛で割って飲んで肝臓にやさしいなどと言っていることあります。お酒にターメリックが入ると少し苦みが感じられて、かえってスッキリした飲み口になりますよね。
2.ターメリックの香りや味
ターメリックは、かすかに土のにおいのような香りがします。この土の香りは加熱するとなくなりますので、料理には主に色づけとして使われています。
流通しているターメリックを舐めると、種類にもよりますが、やや苦みを感じます。ですから、カレーなどに使う場合には使いすぎないように十分注意する必要があります。
ターメリックには何十もの種類があるそうで、同じターメリック(ウコン)という名前で売られていても、香りや苦み、そして色味が少しずつ異なります。料理をする時も手元のターメリックの特性を理解して使うようにするといいでしょう。
3.ターメリックの育て方
ウコンは日本でも比較的育てやすいスパイスです。
植え付けに適しているのは4月~5月です。ウコン種が売られていますので、まずそれを手に入れましょう。鉢植えでもいいですが、根茎が目的ですから直植えのほうが適していると思います。どうしても鉢植えという場合には少し深めの鉢かプランターを用意しましょう。
ターメリックは水はけが良く少し湿った土を好みます。事前に畑で堆肥や腐葉土を混ぜてターメリック用の土を作っておきましょう。そしてウコン種は5cmくらいの深さに植え付けて下さい。大きさがマチマチかと思いますが、小さいからと言って芽がでないわけではないので、同じように扱って下さい。
植え付けの時はたっぷり水をかけておきますが、水が溜まると腐ってしまいますので、以後はほどよく湿った状態をキープするようにしましょう。
春から秋にかけては日当たりの良い場所で育てましょう。暑さにも強いので、日影を作る必要もありません。夏には油カスなどで追い肥をしておきましょう。そして秋になって葉が枯れたら、根茎を掘って株分けして増やすことができます。冬はおがくずの中に入れて越冬させます。
収穫した根茎は次のターメリックパウダーの作り方を読んで、粉末を作ってしまいましょう!
4.ターメリックパウダーの作り方
健康のためには、根茎を刻んで生で食べる方もいますが、なかなかこれでは風情がないと思われるかもしれません。そこで収穫したターメリックを一気に粉末まで加工してしまいましょう!
秋に収穫した根茎をターメリックパウダーにする工程を確認しましょう。この工程も日本で十分可能な内容になっています。
まずは収穫した根茎を、タワシなどで丁寧に洗って汚れを落としていきます。
洗ったターメリックを乾燥させるのですが、根茎のままでは乾燥しませんので、スライサーを使ってポテトチップのような薄い薄いスライスにしていきます。
次にスライスしたターメリックを重ならないように広げて天日干しにします。これを完全に乾くまで何回も行います。
完全に乾いたら、ミキサーなどで粉末に仕立てます。これで完成です。
5.ターメリックを使った料理レシピ
普段の調理の中でターメリックを使うことはあまりないかもしれません。ところが、例えばカレーを作るときのライスがターメリックライスにするだけで、今までと全く違ったカレーが楽しめるようになるのです。
今回はターメリックの色が楽しめるメニューをご紹介します。
5-1.ターメリックライス
このターメリックライスは是非カレーに合わせて試してほしいなと思います。色合いが華やかで食卓が一気に明るくなりますよ!
材料:2合
米 2合 ターメリック 小さじ2 バター 10g ドライパセリ 適量 |
(1)米を研いで炊飯器に入れ、水を規定量より若干少な目に入れる
(2)米を10分ほど浸したら、ターメリックを振り、色が均一になるように混ぜあわせる
(3)バターを上に乗せて炊飯を開始する
(4)炊き上がったら皿に盛って、上からドライパセリを振って完成!
5-2.サツマイモとにんじんのスープ
次にご紹介するレシピは、野菜たっぷりのスープです。ターメリックで色づけして、さらにバターで風味を出しています。
他の野菜でもできますので、冷蔵庫の中などに眠っているお野菜を使ってみて下さい。
材料:4人分
さつまいも 200g にんじん 1本 玉ねぎ 1/2個 ニンニク 1片 しょうが 1片 コンソメ 2個 バター 10g ターメリック 適量 塩コショウ 適量 水 600cc オリーブオイル 大さじ2 |
(1)さつまいもとにんじんを2cm角程度の大きさに切る。玉ねぎはみじん切りにする
(2)しょうがとニンニクは、すりおろしておく
(3)鍋にオリーブオイルを熱し、さつまいも、にんじん、玉ねぎを約5分炒める
(4)鍋にしょうが、ニンニク、バター、ターメリックを加えてさらに5分炒める
(5)水を加え、コンソメを入れ具材がやわらかくなるまで煮込む
(6)火を止めて、いったん冷ましてから、ブレンダーでなめらかにする
(7)再度加熱して、最後に塩コショウで味を調えたら完成!
5-3.たくあん
たくあんは日本のソウルフードなのではないでしょうか。最近の都心の定食やでは、たくあんが小さく薄く切られたものしか見かけませんが、以前は厚みのあるたくあんが2~3枚必ず添えられていましたよね。
たくあんが色づけられていると、まずは合成着色料を疑いますが、このレシピは完全天然着色料のターメリックを使います。もし無ければクチナシでも色づけできます。
材料:1本分
大根 1本 水 300cc 塩 50g 砂糖 100g みりん 大さじ1 酢 小さじ2 ターメリック 適量 |
(1)大根を洗って皮をむき、縦に4つ割りにする。ジップロックに入るように長さを揃えて切る。
(2)ジップロックに大根、水、塩を入れ、冷蔵庫で3日ほど寝かせる
(3)冷蔵庫から出して、ジップロックから大根を取り出し、水洗いしてから水けを拭きとる
(4)別のジップロックに大根、砂糖、みりん、酢を入れ、良く揉んでからターメリックを少しずつ、色を見ながら入れる
(5)冷蔵庫で3日寝かせる。ときどき揉んだり上下を反転させたりよくなじませる
(6)冷蔵庫から取り出し、切り分けて完成!