ガラムマサラとは、主にインド北部で使われるミックススパイスです。ガラムマサラと言われると、我々には辛いイメージがありますね。実際にはどうなのでしょうか?
また日本ではこのガラムマサラとカレー粉がどう違うのかという話が良く出ますが、どこが同じで何が違うのか、その辺のところをしっかりマスターしたいと思います。
1.ガラムマサラとは
ガラムマサラは北インドのミックススパイスで、通常3~10種類のスパイスをブレンドして作られます。
ガラムマサラとはヒンディー語の呼称で、英語では“garam masala”と書きます。このgaramは「熱い」とか「温かい」という意味で、masalaは「粉末状の混合スパイス」を指します。
このこともあってか、日本ではガラムマサラは辛いものだという認識を持たれている人が多いのですが、どちらかというと料理の仕上げにささっと加える香りづけのスパイスになります。
「どちらかというと」と書いたのは、そうは言っても下味をつけたり、調理中にも使われていて、これといった決まりがないためです。
ですから条件としては、仕上げスパイスとしても使えるために、材料は生でも使えるスパイスがメインになるということです。では、その材料を見ていきましょう。
ガラムマサラは地域によって、家庭によって多様なレシピがあります。ここでは北部インドの基本的な材料を見ていくことにしたいと思います。以下に北部インドでのガラムマサラの一例をあげます。
- シナモン
- クミン
- カルダモン
- ブラックペパー
- クローブ
- メース
- ローレル
だいたいこの組み合わせが基本になると思って下さい。もちろんそれぞれの分量を含めたバリエーションは無限にあります。カルダモンもグリーンなのかブラックなのかの違いや、メースの代わりにナツメグを使うこともあるでしょう。本当に家庭の味なのですよ!
日本に住んでいる人なら何となくその気持ちが理解できるかも知れないと思うのは、味噌や醤油に慣れ親しんでいるからです。よく知人の家に遊びに行った際にごちそうになり、味噌汁の味の違いに気づくことがありますよね。母から教わったレシピだということもありますが、味噌が違うことがその理由だったりします。味噌は日本中に何種類あるかわかりません。本当に家庭ごとに違っています。
また醤油についても北から南までいろんな味があります。同じお刺身を食べるにも、甘い醤油や辛い醤油、濃口醤油に薄口醤油と地域や家庭でこだわりがあります。九州でお刺身を食べた時に、あまりに醤油が甘くて驚いた記憶があります。びっくりしますよね!
このガラムマサラもインドでは、それぞれの家庭で代々伝わってきたもので、その配合は無限のバリエーションを持っています。上に示した北部インドでのガラムマサラはほんの一例なので、好みで足したり引いたりアレンジしていくのが本来のガラムマサラの姿です!どこかの家でびっくりするような味に出会うこともあるでしょう。
さて、ガラムマサラと言われるものの中にも、他にいくつか代表的なレシピがあります。その一つが「ムガール・ガラムマサラ(Mughal garam masala)」です。レシピは次の通りです。
- シナモン
- カルダモン
- ブラックペパー
- クローブ
- メース(ナツメグ)
さきほどのガラムマサラからクミンとローレルが引かれていますね。クミンやローレルの香りが立たない分、少しやさしいガラムマサラになります。
もう一つ有名なのが「カシミール・ガラムマサラ(Kashmiri garam masala)」です。インド最北部のカシミール地方の名前がついていますが、例えば次のような組み合わせがあります。
- シナモン
- クミン
- カルダモン
- ブラックペパー
- クローブ
- メース
- ナツメグ
- フェンネルシード
ここではフェンネルシードを加えてみましたが、実は使わないレシピもあり、その場合は基本のガラムマサラとほとんど変わりませんね…。
上に3種類の組み合わせを示しましたが、何となくガラムマサラの実体が見えてきたと思います。そして勘の良い方は気づいていると思います。ガラムマサラの材料に、あのカレーに必須のスパイス「コリアンダー」が無いことを…
2.ガラムマサラとカレー粉の違い
さて、ここで問題になってくるのは、このガラムマサラとは、実はカレー粉(カレーパウダー)なのではないか?という疑問です。
確かにガラムマサラに使うスパイスを見ると、カレー粉にも入っているスパイスばかりです。いったい何がどう違うのでしょうか。
その一つのキーになるスパイスがコリアンダーです。以前、このスパイスびとでもコリアンダーを詳しく学んでいた時に、オリジナルカレー粉のレシピを紹介しました。
そうです。ガラムマサラにコリアンダーが加わることで、味と香りが一気にカレーっぽくなるのです。
味と香りはカレーに近づきました。では見た目はどうでしょうか?ガラムマサラを使って調理しても色味は全く変わりません。カレーといえば、もう少し黄色いものを想像するかもしれません。
もうおわかりですね?ターメリックです。ターメリックの黄色を加えることで、さらにカレー粉に近づいてきました。
残るもう一つの要素は、辛みです。これは唐辛子類を使うことでいくらでも辛みを出すことができますから、問題ないでしょう。
さてこのように、ガラムマサラからカレー粉に近づける作業を通して、ガラムマサラとカレー粉の違いを確認してきました。ガラムマサラはカレー粉の原料になりますが、カレー粉はガラムマサラの原料にはなりません。通常、カレー粉のほうが使うスパイスが多いのです。ガラムマサラの多くて10種類に対して、本格的なカレー粉は20種類とか30種類とかいう数になってきます。
これは元々ガラムマサラが作り置きのスパイスであることから理解が深まります。つまり、ガラムマサラは本当にベースのミックススパイスで、実際に料理をする際には、素材に合せてガラムマサラにさらにスパイスやハーブを加えて使うのです。
例えば肉料理や魚料理には臭み消しのガーリックやジンジャーを加えたり、野菜料理には香りのフェンネルを加えたりというわけです。そして辛みは唐辛子で好みに調整すればオッケーなのです。
何となくガラムマサラの輪郭が見えてきたところで、ガラムマサラを実際に作ってみることにしましょう。
3.自家製ガラムマサラを作ろう!
ここでは、さきほど学んだインド北部の基本的なガラムマサラを作ってみることにしましょう。
ガラムマサラの材料
シナモン 1本 クミン 小さじ2 カルダモン 2個 ブラックペパー 小さじ1 クローブ 小さじ1 メース 小さじ1 ローレル 中1枚 |
(1)カルダモンの殻を剥いて、中の黒い粒のみを使う(省略しても構いません)
(2)シナモンは手でいくつかに割っておく
(3)フライパンを弱火で熱し、メース以外の材料を材料を香りが出るまで炒める
(4)香りが立ってきたら、全ての材料をミルに入れて粉末状にする
(5)ザルを深めの皿に乗せ、スパイスを濾す
(6)ザルに残ったスパイスをもう一度ミルにかけ、またザルを通す
(7)十分に粉末が細かくなったら完成!
これで基本のガラムマサラができました。出来上がりのガラムマサラを味わってみて、好みで材料を増減してみて下さいね。あとはコリアンダーを加えてカレー粉っぽくするもよし、ナツメグを加えて甘みを増すのもよし、自由にアレンジしてみましょう。
4.ガラムマサラを使った料理レシピ
それではいつものようにガラムマサラを使ったレシピを紹介していきましょう。
今回はせっかく自家製ガラムマサラを作りましたので、それを使ったレシピを紹介したいと思います。
4-1.スープカレー
最初の料理はスープカレーです。一時期「札幌スープカレー」がブームになったこともありましたが、スープカレーはご存じでしょうか。
本来であれば、カレースープと言うべきでしょうが、普通のカレーと違ってカレーがスープ状になっています。冬の寒さが厳しい地方ならではのメニューですね。
材料:2人分
ガラムマサラ 大さじ1 コリアンダー 小さじ2 クミン 小さじ2 フェンネル 小さじ1 ナツメグ 小さじ1 にんにく 1片 しょうが 1片 鶏肉 100g 玉ねぎ 1個 ジャガイモ 小2個 にんじん 1/3本 ゆで玉子 1個 コンソメ 1個 水 800ml 塩コショウ 適量 |
(1)鶏肉を食べやすい大きさに切り、玉ねぎをみじん切りに、にんじんを食べやすい大きさに切る
(2)にんにくをみじん切りに、しょうがをうす切りにする
(3)鍋にサラダ油(分量外 大さじ2)を入れて弱火で熱し、にんにくを加え香りを出す
(4)ガラムマサラなどのスパイス類をすべて鍋に加え、焦げないように数分炒める
(5)玉ねぎを加え、玉ねぎがしんなりするまで炒める
(6)水とコンソメ、しょうがを加え、軽く塩コショウを振り、中火で加熱する
(7)鶏肉と野菜を加え、具材が柔らかくなるまで弱火~中火で煮込む
(8)最後に塩コショウで味を調え、皿に盛り、ゆで玉子を半分に切って乗せたら完成!
4-2.鮭のムニエル
ここでは魚料理にガラムマサラを使ってみたいと思います。今回料理するのは鮭!
オーソドックスなムニエルをガラムマサラの力で、香り高いスパイシーな一品にしてしまいましょう。
材料:2人分
生鮭 2切れ ガラムマサラ 小さじ1 コリアンダーパウダー 小さじ1/2 塩コショウ 適量 小麦粉 大さじ2 |
(1)生鮭に塩コショウを振り30分置く
(2)生鮭にガラムマサラ、コリアンダーを擦り込み、両面に小麦粉をまぶす
(3)フライパンにサラダ油(分量外 大さじ2)を熱し、生鮭の両面がこんがりするまで焼く
(4)皿に盛り、仕上げにガラムマサラ(分量外)をひと振りしたら完成!
4-3.ヨーグルトサラダ
インド料理にはヨーグルトを使ったものがいろいろありますね。カレーにも入れますし、タンドリーチキンやラッシーなどのドリンクもあります。
実は「ライタ」と呼ばれるヨーグルトサラダもインドではポピュラーな料理なのです。さっそく作ってみましょう。
材料:2人分
ヨーグルト 1カップ きゅうり 1本 玉ねぎ 1/2個 トマト 1個 ガラムマサラ 小さじ1 レモン汁 小さじ1 塩 小さじ1/2 |
(1)玉ねぎをみじん切りに、きゅうりとトマトは1センチ角に切る
(2)ボウルに玉ねぎときゅうりを入れ、塩(分量外 少々)を振って水気を出す
(3)玉ねぎときゅうりをザルにとって軽く水洗いし、水気を切る
(4)ボウルにヨーグルトを入れ、なめらかになるまで攪拌する
(5)ボウルにガラムマサラ、レモン汁、塩を加え、混ぜ合わせる
(6)ボウルに野菜を加えて、軽く混ぜ合せたら完成!