クローブ

天国の香り!クローブの魅力と料理


クローブ・ホール

クローブというスパイスは、スーパーのスパイス売り場には必ずと言ってもよいほど並べられていますが、このクローブが家庭料理などで実際に使われるケースはとても限られています。

そこで、クローブというスパイスの特徴や個性を知って、日常の料理に活かしてもらう方法を紹介していきたいと思います。

1.クローブの名前と歴史

2.クローブの香りや味

3.クローブの育て方

4.スパイスとしてのクローブの作り方

5.クローブを使った料理レシピ

 

1.クローブの名前と歴史

このスパイスの原料となる「クローブ」は、別名スパイス諸島(香料諸島)とも呼ばれたインドネシアのモルッカ諸島原産の常緑低木です。

<モルッカ諸島地図>

maluku, indonesia

 

クローブの木
クローブの木

スパイスとしては、このクローブのつぼみを乾燥させたものを利用しますが、そのつぼみが「釘」のような形をしていることから、フランス語の釘「Clou」と同じ言葉を語源とする英語「Clove」と呼ばれるようになりました。

中国語でも、クローブの見た目から、釘の意味を持つ「丁」が当てられ、「丁子(ちょうじ)」や「丁香(ちょうこう)」などと呼ばれています。また中国では、釘のほかにも鶏の舌に似ていることから、「鶏舌香(けいぜっこう)」とも呼ばれていました。

日本では、中国式の丁子や丁香、鶏舌香、西洋式のクローブなどが用いられています。

クローブの果実
クローブの果実

クローブは紀元前から各地で利用されてきたようで、インドの古代医術アーユルヴェーダでも消化器官の治療に使われていました。

ヨーロッパにも2世紀頃には伝わり始め、6世紀頃には貴族たちの間でも広まっていたたようです。

日本の正倉院の帳外品のリストにも丁香(クローブ)の名が載っていますが、仏教と深く関わっていることから、やはり料理用ではなく、お香や邪気払いとして使われたのではないかと推測されます。

その後、クローブのスパイスとしての価値は大航海時代に飛躍的に高まります。16世紀には長らく不明とされていた原産地を特定したポルトガル人によって、クローブ取引は管理されていました。

トリニダード号
マゼラン隊トリニダード号

その後、世界一周を成し遂げたマゼラン隊のビクトリア号もマゼラン死後に香料諸島に到達して、大量のクローブを積みスペインに持ち帰るなど、高価な香料として益々需要は高まりました。マゼラン隊には、もう一方のトリニダード号がクローブを積みすぎて浸水し、修理をしている間にポルトガルに捕まってしまったという逸話も残っています。

17世紀に入るとクローブの生産管理はオランダ人の手に移り、18世紀の終わり頃にフランスがモーリシャスなどでクローブ栽培を盛んに行うようになって、各地で大農園が開かれました。現在でも、モルッカ諸島のあるインドネシアがクローブの最大生産国です。

皆さんは千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)に登場するシンドバッドをご存じでしょうか。シンドバッドは単に船乗りということではなく、インドからクローブなどの香辛料を運ぶ交易商人だったのです。物語に残るほど、当時の香料・香辛料貿易は盛んだったのですね。

 

2.クローブの香りや味

クローブには強く甘い香りがあります。2世紀末の後漢時代の中国で、応劭(おうしょう)が書いた「漢官儀」という書物に、当時の尚書郎(役人)が皇帝に話をする際に、鶏舌香(クローブのこと)を口に含んで口臭を消していたという記録が残っています。

このクローブの香りに含まれるオイゲノールという成分は、ゴキブリなどの害虫が嫌うと言われていて、台所やゴミ置き場などに置くだけで効果があるとされています。日本でも平安時代には、クローブを入れた香袋を防虫用につるしていたという記録があります。他にも胃薬として使ったり、武具の香りづけに使ったり、クローブは意外と日本人にも古くからなじみのあるスパイスなのですね。

乾燥されたクローブは、噛むと辛みと鋭く舌がしびれるような刺激があります。しかしこのクローブの強い刺激は、ほかのスパイスと混ぜたり、料理で煮たり焼いたりすることによってまろやかになります。カレーでおなじみのミックススパイス、ガラムマサラにも、クローブはシナモンやナツメグとともにメインのスパイスとして使われます。

クローブの最大生産国であるインドネシアは、同時にクローブの最大消費国でもありまして、その用途はなんとタバコ。クローブをタバコの葉に混ぜて利用するそうです。愛煙家の方はご存知かと思いますが、「ガラム」というタバコがあります。少し遠くで吸われていても、それと分かるガラムの強く甘い香り。そうです、あの香りはクローブの香りだったのですね。

 

クレテック
クレテック

インドネシアでは、このようなタバコの葉にクローブを混ぜたタバコのことをクレテックと呼んでいますが、クローブが燃える時のパチパチする音からこの名前がついたようです。このクローブ入りのクレテックは、インドネシアでは非常にポピュラーで、多くの喫煙者がこのクレテックを好んで吸っています。

 

3.クローブの育て方

クローブの種子は熟すと自然と地面に落下してきます。そのクローブの種子は発芽してから土に植えられる苗になるまで2年ほどかかります。

それからさらに、たっぷりの水と肥料を与えながらクローブを栽培すると、約7~8年で花が咲く状態になり、約20年で完全に成長して8~10メートルの高木になります。そしてそのクローブの木は、その後40~50年にわたって実をつけ続けます。

何とも気の長い成長過程ですが、モルッカ諸島の人々は、子どもが誕生する度に1本のクローブを植えていたそうです。誕生からクローブの木とともに成長して、その木とともに人生を過ごし、同じ頃に生涯を終える。そんな自分のクローブの木があるなんて素敵な話ですね。

クローブの収穫
クローブの収穫

さて、スパイスとしてのクローブは、つぼみを利用しますが、収穫時期は夏場と冬の年2回で、花びらが開く直前のつぼみを収穫します。収穫したばかりのつぼみは、ほのかに甘い香りがします。

昔ながらのクローブ農園では、クローブの木に長~いハシゴをかけ、人が登って手摘みで収穫します。命綱など無しに手作業で収穫する姿は、日本人にはちょっとハラハラさせるものがあります。

温室などを利用すれば、栽培することは可能ですが、熱帯の海辺の地方が栽培には適していると言われています。また木が大きく成長するため、広い場所を確保することも必要です。このあたりがクローブの温室栽培のネックにもなってきます。

 

4.スパイスとしてのクローブの作り方

収穫されたクローブのつぼみ
収穫されたクローブのつぼみ

クローブは1年に2回収穫され、農園で収穫されたクローブのつぼみは、手作業で枝などの不要物と分けられて、そのまま4日から5日、長いときは1週間天日干しで乾燥されます。

この乾燥の過程で、クローブ独特の甘い香りが強くなって色も茶色く変色し、重さも元のクローブの1/2から1/3になります。これで私たちが目にするクローブの完成です。

クローブ・ホールバリ島などの観光地に行かれたことのある方は、路上で無造作に天日干しされているクローブを見たことがあるかもしれません。

乾燥したクローブは、釘の形に似た茶色い形をしていて、ホールスパイスとしてのクローブはこの形で完成になります。実際の料理では、乾燥したクローブは細かく砕かれ、パウダー状になったものが使われることが多いと思いますが、ホールのクローブを野菜や肉に刺して使う方法も、一度覚えるとやみつきになります。

 

5.クローブを使った料理レシピ

ここでは、クローブを使ったレシピを3つ紹介します。香りの強いクローブがどのようにアレンジされるのかご期待下さい!

5-1チャイ

5-2野菜たっぷりポトフ

5-3豚肉のグリル

 

5-1.チャイ

インドのお茶といえば、スパイスのたっぷり効いたチャイです。

ここでは、クローブを使って簡単に作れるインド風マサラ・チャイの作り方を紹介します。使う紅茶はどんな種類でもかまいません!

チャイ

材料:4人分

紅茶 小さじ3~4(またはティーバッグ3~4個)
クローブ 小さじ1/2(ホールの場合は2個)
カルダモン 小さじ1(ホールの場合は1個)
シナモン 小さじ1/2(ホールの場合は砕いて破片を数個)
ローリエ 1枚
黒こしょう 少々(ホールの場合1個)
すりおろししょうが 小さじ1
砂糖  大さじ1~2
牛乳 200cc
水 500cc

(1)鍋に水、紅茶、しょうが、クローブ、カルダモン、シナモン、ローリエ、黒こしょうのスパイス類を入れて火にかける

(2)沸騰したら弱火にして砂糖を入れ3分煮る

(3)強火にして沸騰させ、牛乳を入れる

(4)沸騰したら、弱火にして3分

(5)もう一度強火にして沸騰したら火を止めて完成

(6)目が細かい茶こしなどを使って、カップに注ぐ

★レシピの裏ワザ★ クローブなどのスパイスはお好みで調整して下さい。強めの香りが好きであれば、倍くらいの量にしても美味しく感じられると思います。また牛乳の量もお好みで適量を加えて下さい。

 

5-2.野菜たっぷりポトフ

フランスの家庭料理ポトフ。野菜や肉、ソーセージなどをクローブなどのスパイスを使って煮込んだ料理です。

ポトフ

材料:4人分

ソーセージ 大4本 または 豚バラブロック 400g
ジャガイモ 4個
にんじん 2個
タマネギ 2個
キャベツ 半個
クローブ 4個(ホール)
ローリエ 2枚
固形ブイヨン 2個
塩 少々
黒こしょう 少々

(1)豚バラを使う場合、豚バラを8等分し、塩コショウ(分量外)をし、フライパンで全面に焼き色をつけておく

(2)タマネギは皮をむき、上下を切り落とす。タマネギの側面にクローブのホールを2本ずつ刺す。釘形のクローブを、まさに釘のように刺します!

(3)ジャガイモはピーラーで皮をむき、半分に切る。サイズが小さい場合は、切らずに使用する

(4)にんじんはピーラーで皮をむき、大きめの乱切りにする

(5)キャベツはくし型切りにする。鍋が小さい場合には、葉をはがし、ザク切りにする

(6)鍋にキャベツ、ジャガイモ、にんじん、タマネギ、ソーセージ(豚バラ)を入れ、全体が隠れる程度に水をはる。

(7)固形ブイヨンを入れ、強火にかける

(8)沸騰したら、アクを取りながら弱火で50分煮込む

(9)野菜がやわらかくなったら、火を止め、好みで塩、黒こしょうで味付けする

★レシピの裏ワザ★ ル・クルーゼやストウブのような厚手の鍋を使うと、よりクローブやローリエのスパイスの香りが失われずに美味しく調理できます。その場合には、水分は半分くらいにすると野菜のうま味が堪能できます。

 

5-3.豚肉のグリル

豚ロースのおいしさをギュッと凝縮した料理です。クローブが刺さったまま皿に盛られた豚肉は、見た目も豪快です!

豚肉のグリル
クローブとクミンを使った豚肉のグリル

材料:4人分

豚ロースかたまり 400g
クローブ 6個(ホール)
クミン 小さじ2
エルブドプロバンス 適量
塩 適量
黒こしょう 適量
バルサミコ酢 小さじ2
ディジョンマスタード(粒) 適量

(1)豚ロースを調理用たこ糸で縛る

(2)塩、黒こしょうをすり込み、30分ほど置く

(3)縛った肉を鍋で約30分煮る

(4)肉を鍋から引き上げ、クローブを刺す切れ込みを入れる

(5)塩、黒こしょう、クミン、エルブドプロバンスを振る

(6)切れ込みにクローブを等間隔に刺す

(7)オーブンを170度で予熱し、15分焼く

(8)肉汁にバルサミコ酢を加え、煮詰めてソースを作る

(9)焼き上がりの豚肉のたこ糸を切り、クローブが刺さったまま切り分ける。

(10)(8)で作ったソースをかけ、ディジョンマスタードを添えて完成

 

 


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