キャラウェイ

キャラウェイはイギリス国教会誕生の遠因になったスパイス


キャラウェイというスパイスですが、日本ではあまり知られていないスパイスのひとつです。

その独特の香りと味が日本の料理とあまりマッチしないというのがその原因でしょうか。

しかし、スパイスの歴史は古く多くの国、民族によって利用されてきた人気のスパイスなのです。そして現在でもヨーロッパを中心に広く使われているスパイスです。

見た目はクミンそっくりなこのキャラウェイ。じっくりとその人気の秘密に迫ってみたいと思います。

1.キャラウェイの名前と歴史

2.キャラウェイの香りや味

3.キャラウェイの育て方

4.キャラウェイシードの作り方

5.キャラウェイを使った料理レシピ

 

1.キャラウェイの名前と歴史

キャラウェイは地中海沿岸が原産地とされるスパイスで、5000年以上前から人類に用いられてきました。

キャラウェイはセリ科の2年草で、地中海沿岸のどの地域にも見られるありふれた植物だったようです。

歴史的な裏付けもされていて、古いものでは、スイスの中石器時代から新石器時代にかけての湖上住居跡からキャラウェイが発見されているそうです。よくスイスのメソリティク湖周辺の遺跡から発見されたと書かれているのを見ますが、これは正しくない説明です。メソリティク湖とは推測するにa Mesolithic lakeのことで「中石器時代の湖」を意味しますから、おそらく誰かが海外の文献を間違えて解釈して固有名詞として書いたのが広まったのではないかと思います。

キャラウェイ

ローマでもユリウス・カエサルの時代に“chara”(カラ)という食料が軍隊に導入されました。これはキャラウェイの根とミルクから作られたパンで体に良いとされていました。まさにキャラウェイを食べながら進軍していたのですね。

薬草学の父と呼ばれるディオスコリデスも、顔色の悪い少女にキャラウェイのオイルを勧めています。キャラウェイは胃腸病に効くと言われていたこともあって、薬用に広く利用されていたことが分かります。

一方でキャラウェイには不思議な力があると考えられてきました。例えば、子どものベッドの下にキャラウェイを入れておくと魔除けになるという言い伝えや、家畜のえさにキャラウェイを混ぜておけば家畜が逃げることはないといった言い伝えが残っています。

時にキャラウェイがもとで歴史が変わってしまったこともありました。

イングランド王ヘンリ8世は、後継者となる王子誕生を待ちわびていましたが、正妻の王妃キャサリンとの間に男の子は産まれませんでした。そしてヘンリ8世も次第に体調が悪化して苦しんでいました。

ヘンリ8世には王妃の侍女メアリー・ブーリンという愛人がいたのですが、そのメアリーの姉妹アン・ブーリンは、ヘンリ8世の体調を治すためにキャラウェイを摂ることを勧め、実際に王にキャラウェイを渡したと言われています。そしてそれが効果てきめん!キャラウェイのお蔭ですっかり元気になったヘンリ8世はアンを愛人にしたてます。ところがアンは愛人という形を拒否し、王に対して正式な結婚を迫ったのです。

しかしながら当時のカトリック教会では離婚は禁止されているため、王妃キャサリンの対処に窮したヘンリ8世は、あの手この手を尽くしたあげく、なんとカトリック教会(教皇)と絶縁してしまったのです。そしてイギリス国教会の原点とも言うべき国王至上法を出し、イングランド国王が政治宗教の両面で最高指導者であると決めてしまったのです。このヘンリ8世とアンの子がエリザベス1世です。そしてアンは結婚の3年後に姦通罪などで処刑されてしまいました。アンは派手好きで国内でも国外でも評判の悪い王妃だったようです。

この後もヘンリ8世には次々と災難が降りかかるのですが、果たしてアンがキャラウェイを渡したという話の真実性はいかに…。ただ人々の間でキャラウェイが薬として用いられていたのは本当で、実際に服用していたかもしれませんね。

キャラウェイ

さて、このキャラウェイは実は浮気防止の薬としても使われていて、惚れ薬などにも入れられていたようです。ヘンリ8世の話を読んだ後では全く説得力がありませんね。家畜は逃げ出さないかもしれませんが、人間には効果が無かったのでしょうか。

ここでキャラウェイの名前についても学んでみましょう。

キャラウェイは英語のcarawayの日本語読みですが、carawayはアラビア語のkarawya(カラウィアー)に由来すると考えられています。しかしこのkarawya自体がラテン語やギリシャ語に由来するのではないかという説もあったり、そもそもキャラウェイは各地でいろいろな別名で呼ばれていたこともあって、ルーツがなかなか特定できないようです。

日本には明治時代に入ってきたようで、和名を姫茴香(ヒメウイキョウ)と言います。ディルも同じ姫茴香と呼ばれることがあるので、しっかり区別したいところです。

 

2.キャラウェイの香りや味

アジョワンとキャラウェイ
アジョワン(左)とキャラウェイ(右)

キャラウェイは独特の爽やかな甘い香りと、口の中に広がるほろ苦い味があります。見た目はアジョワンを大きくした感じで、クミンによく似ていますが、香りや味は全く異なっています。上の写真の左がアジョワンで、右がキャラウェイです。形や大きさに違いがありますね。

参照:料理にも薬用にも使われる「アジョワン」

このキャラウェイの風味はヨーロッパ各地で定着していて、ドイツの伝統料理ザワークラウトには欠かせないスパイスで、カンパリなどのリキュールの材料にも使われています。

 

3.キャラウェイの育て方

キャラウェイ

現在ではキャラウェイは世界中で栽培されていて、日本でも種が入手しやすいスパイスです。

暑さにあまり強くないので、10月頃の少し暑さが和らいだ頃が種まきの時期としておすすめです。また最低でも20センチ以上の株間で育てますので、プランター栽培の場合、少し窮屈になってしまうかもしれません。大きめの鉢に一株ずつというのが理想です。

まずは有機肥料をたっぷり混ぜた用土に種を蒔き、薄く土をかぶせます。土が乾燥しないように水分を調整します。

約2週間で発芽しますので、本葉が出てから株間が2センチになるように間引き、もしくは植え替えをして下さい。ただしキャラウェイは移植にはあまり強くないことを念頭において、丁寧に扱って下さい。

冬は10℃以上の日当たりの良い場所で育てて下さい。冬を越して春になると成長して大株になりますので、必要に応じて追い肥をしましょう。

そして6月頃に花が咲き、実をつけます。その実がスパイスになります。

 

4.キャラウェイシードの作り方

キャラウェイ

株が枯れて実が茶色くなったら、株ごと収穫して風通しの良い日影で乾燥させます。

完全に乾燥すると実はポロポロ取れるようになります。

またキャラウェイは実だけでなく、葉もハーブとして使えますし、根も食用になります。間引きなどのタイミングで美味しくいただきましょう。

 

5.キャラウェイを使った料理レシピ

日本にはキャラウェイを使った料理というのは存在しないのですが、これまでみてきた通り世界的にはとても知られたスパイスで、各地でいろいろな料理に用いられています。

今回はその中から選りすぐりの3点をご紹介したいと思います。調理も比較的簡単なものを選んでみましたので、ぜひ挑戦してみて下さい。

5-1.ザワークラウト

5-2.キャラウェイシードケーキ

5-3.にんじんサラダ

 

5-1.ザワークラウト

キャラウェイを使ったドイツの伝統料理で、キャベツを発酵させた漬物です。よくドイツビールを扱う店に行くと、ソーセージなどと一緒にでたりしますね。いろいろなレシピがありますが、本来は乳酸菌によって自然発酵させたものなので、酢や砂糖は使いません。

今回はそのドイツの伝統的なレシピで作ってみましょう。

材料:作りやすい分量

キャベツ 半分
キャラウェイシード 小さじ2
塩 小さじ2
ローリエ 1枚(お好みで)
乾燥赤唐辛子 1本(お好みで)

(1)キャベツは洗って千切りに、乾燥赤唐辛子は種を取って輪切りにする

(2)ボウルにキャベツ、キャラウェイ、塩を入れ、良く揉んで水分を出す

(3)保存容器に水分ごと移して、ローリエと赤唐辛子を加える

(4)重石をしてフタを締めて4日~1週間ほど常温発酵させる

(5)酸味が出てきたら完成!冷蔵庫に移して保存する

★レシピの裏ワザ★ザワークラウトの常温発酵ですが、摂氏15度かそれ以下が適温です。夏には室温が20℃近くなりますが、そうなると失敗するケースが多くなります。なるべく涼しいところで発酵させてあげましょう。

 

5-2.キャラウェイシードケーキ

キャラウェイシードケーキはイギリスの伝統的なケーキで、シードケーキと言われるスパイスを使ったケーキのひとつです。

プチプチとしたキャラウェイの食感と香りを楽しみましょう。

材料:1本分

バター 200g
砂糖 200g
玉子 3個
薄力粉 200g
ベーキングパウダー 小さじ2
キャラウェイシード 大さじ2
牛乳 30ml

(1)バターを溶かし、他の材料と一緒にボウルに入れる

(2)なめらかになるまでよくかき混ぜる

(3)オーブンを160℃に予熱する

(4)材料を型に流し込んで、オーブンで約50分焼く

(5)竹串を挿して何もつかなくなったらオーブンから出して冷ます

(6)室温まで下がったら完成!

 

5-3.にんじんサラダ

にんじんサラダというとキャロット・ラペが知られていますが、ここではキャラウェイを使ったサラダのレシピを紹介したいと思います。

材料:2人分

にんじん 1本
キャラウェイシード 小さじ1
白ワインビネガー 大さじ1
オリーブオイル 小さじ1
塩コショウ 適量

(1)にんじんを細めの千切りにする

(2)フライパンにキャラウェイシードを入れ、弱火で加熱して香りを出す

(3)ボウルににんじん、キャラウェイシード、白ワインビネガー、オリーブオイルを入れ混ぜ合わせる

(4)最後に塩コショウで味を調えたら完成!

★レシピの裏ワザ★このレシピは、スパークリングワインや白ワインに合うように書かれていますが、もし子どもにも食べさせたいという場合には、砂糖かハチミツを少し加えてみて下さい。子どもが好きな味になりますよ。


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