オニオンは日本では「たまねぎ」と呼ばれ、私たち身近な食材です。カレーライスにシチューに、また野菜炒めにもオニオンはたっぷり使われていますね。そして調理の際に涙が止まらなくなることも良く知られています。
ところがオニオンは私たち日本人にとっては比較的新しい食材で、意外とその正体は知られていないのが実情です。
さっそく詳しく見ていこうと思いますが、オニオンの素晴らしさに改めて気づくこともあると思いますよ!
1.オニオンの名前と歴史
オニオンは中央アジア原産と言われるヒガンバナ科の植物です。分類体系によってはユリ科になっていたり、ネギ科になっていたりするようですが、その鱗茎が何千年も前から食用として利用されてきました。
記録としての証拠は、旧約聖書の民数記11章5節にオニオン(主な和訳では「たまねぎ」)が登場しています。これはエジプトのことを回想する中で出て来ていることから、およそ紀元前13世紀頃のエジプトではオニオンがニンニクなどと共に栽培されていたと考えることができます。
エジプトではピラミッド建設に関わった労働者にもニンニクやオニオンが配給されていましたから、広く栽培されていた植物であったと思われます。
他の地中海沿岸では、古代ギリシャでは運動選手たちが血流を良くするからと言ってオニオンをたくさん食べていましたし、古代ローマでは剣闘士たちが筋肉をオニオンの汁で揉んでから闘技場に入って行ったそうです。
このような古代ギリシャや古代ローマにおける使用方法は、なかば迷信的なところから抜け出ていないのですが、近世のアメリカではこんな話がありました。
時は19世紀の北アメリカ。南北戦争の真っただ中です。北軍のグラント将軍は備蓄のオニオンが底をつき、北軍本部へ至急オニオンを送るよう催促しました。オニオンが来るまでは軍隊を動かさないと。
このグラント将軍は後の第18代アメリカ合衆国大統領になる聡明な人物、ユリシーズ・グラントです。彼は食料としてのオニオンを要求していたのではなく、実は負傷兵を治療するための消毒薬(殺菌薬)としてのオニオンを催促していたのです。
オニオンにはニンニクのようにアリシンという辛み成分が含まれています。このアリシンには殺菌作用があり、ばい菌や寄生虫に効果があると言われています。負傷兵の治療に使われたのは、オニオンの長い歴史からの経験則だったのでしょう。
このオニオン、日本へは江戸時代に伝わってきたようで、1775年に来日した植物学者のカール・ツンベルクは長崎でオニオンが栽培されていたと「江戸参府随行記」に書いています。
ところで、なぜオニオンを切ると涙が出てくるのでしょうか?このオニオンと涙の関係を科学的に解説すると、このようになります。
オニオンを切るとオニオンの細胞が壊れます。その際に「syn-プロパンチアール-S-オキシド」と呼ばれる揮発性の催涙ガスが発生します。これが目を刺激するため涙が出てきます。
現在ではハウス食品の研究で、その「syn-プロパンチアール-S-オキシド」が生成されるためには、LFSという催涙酵素が必要であることが分かってきました。そのLFSを制御できれば、涙の出ないオニオンができるという期待があります。
その後、遺伝子組み換えではLFSを抑えたオニオンが出来ましたが、そのままでは市場へは出荷できません。そして2015年、ついにハウス食品が「スマイルボール」という名で数量・チャネル限定で販売にこぎつけました。今後、マーケットが広がるといいですね!
さて、このオニオンという名前はもちろん英語のonionの日本語読みなのですが、onionはアングロ・ノルマン語(アングロ・フレンチ)のunion、そして古フランス語のoignonに由来します。これらの語は、ラテン語のunionemという「オニオンのようなもの」「真珠」「一体」という意味を持つ言葉が語源であるそうです。
日本では、戦後まで葱頭という字が当てられていた。現在の玉ねぎ、タマネギという表記が主流になったのは最近のことである。
2.オニオンの香りや味
オニオンと聞くとどうしても辛いというイメージが先行してしまいますが、加熱するとどうなりますか?そうです。甘くなるのです。どうして甘くなるのでしょうか。
実はオニオンは生の状態でも糖度7~8%と非常に糖度が高く、イチゴと同じくらいのレベルなのです。
これを生で食べようとすると、オニオンの細胞が壊れて、辛味成分のアリシンと言う物質が私たちの味覚を大いに刺激します。そして私たちは、オニオンは辛いものというイメージを持ってしまうのです。
ところがこの辛み成分のアリシンは硫黄化合物で、熱を加えると壊れてしまいます。熱を加え続けると、どんどん辛み成分が壊れて甘味成分だけが残りますので、炒めたオニオンは甘いと感じるのです。
3.オニオンの育て方
オニオンは日本でも栽培可能で、畑にネギ坊主を見ることがあります。長ネギの場合もあるでしょうが、玉ねぎの場合もあります。
家庭菜園を考えてみてもオニオンは苗が簡単に手に入りますので、容易に栽培にとりかかることができますね。
オニオンの苗にはいろいろな種類があります。早生、中生、晩生に分かれていて、さらに肉質やとう立ちの有無などで品種が分かれています。ここでは中生のオニオンを取り上げてみたいと思います。
一般的な中生のオニオンの苗は、元肥をした土に11月頃に植え付けます。植える際には20センチ程度の間隔をとるようにしましょう。この感覚が狭いと小さ目のオニオンになってしまいます。
苗は深さ数センチに植え付け、白いところだけが土に隠れるように根元をしっかり押さえて水を与えます。
1ヶ月に1度は追い肥をしますが、2月の追い肥で最後とします。これは収穫後にオニオンが腐らないようにするためです。
葉の8割が倒伏したら収穫時期です。雨の日を避け、なるべく乾燥した日にオニオンを土から抜き、そのままの場所で数日乾燥させます。
その後、畑から集めて、風通しの良いところに吊るして乾燥させます。
4.オニオンの保存方法
乾燥したオニオンはそのまま使えますが、たいていの場合は保存をする必要が出てきます。
まず葉を落としておき、大き目の通気性の良いコンテナに積み上げます。
これで風通しの良い日陰で長期保存が可能になります。
5.オニオンを使った料理レシピ
オニオンは糖度が高いという話をしましたが、オニオンを使ったレシピにもそのオニオンの甘さがいかされたものが多くあります。
また簡単に手に入る食材なので、ほんとうに様々な料理に活用されています。
ここではその中から、オニオン自体が主役になっているものを3つご紹介します。どれも有名な料理ですね!
5-1.オニオンスープ
オニオン料理と言えば、まずこのオニオンスープが頭に浮かんで来るのではないでしょうか。
飴色になるまで炒められたオニオンの甘さがたまらない一品です。
材料:3人分
オニオン 2個 バター 20g 水 600ml コンソメ 小さじ4 塩コショウ 適量 |
(1)玉ねぎを繊維と直角方向に薄切りにする
(2)耐熱容器に玉ねぎを入れて、500Wで3分加熱する
(3)鍋にバターを溶かし、玉ねぎを入れて弱火で玉ねぎが飴色になるまで15分ほど炒める。焦がさないように注意する
(4)水、コンソメを加えて弱火~中火で5分煮込む
(5)塩コショウで味を調えたら完成!
5-2.オニオンリング
日本のファーストフードではフレンチフライがサイドメニューの定番ですが、欧米では同じくらいの人気を誇るのがこのオニオンリングです。
輪っかの形が子どもたちにもウケること間違いなしです!
チリパウダーをしっかり振れば、少しスパイシーなメキシカン風になります。
材料:2人分
オニオン 1個 小麦粉 1カップ 片栗粉 大さじ1 マヨネーズ 大さじ1 水 100ml 塩コショウ 適量 チリパウダー 小さじ1 |
(1)オニオンの上下を切り落とし、厚さ5mmの輪切りにする
(2)ボウルに小麦粉、片栗粉、マヨネーズ、水を入れて軽く混ぜ合わせる
(3)鍋にサラダ油(分量外)を入れて180℃まで加熱する
(4)オニオンをボウルに入れて衣をつけ、鍋に投入する
(5)2分~3分で揚がるので、引き揚げてしっかり油を切る
(6)塩コショウ、チリパウダーで味付けして完成!
5-3.オニオンのコンソメ蒸し
この料理はオニオンスープと違って、オニオンがそのまま丸ごと出てきます。ビジュアルがとってもいい料理です。
もちろんオニオンとコンソメの相性もばっちりです!
材料:1人分
オニオン 1個 ベーコンまたはハム 1枚 コンソメ 小さじ1 水 100ml エルブドプロバンス 適量 黒コショウ 少々 ドライパセリ 適量 |
(1)オニオンの上下を切り落とし、ベーコンは5mm幅に切る
(2)レンジ用の蒸し器にオニオン、ベーコン、水、コンソメを入れ、エルブドプロバンスをお好みで振りかける
(3)フタをしてレンジに入れ、500Wで5分間蒸す
(4)器に移して黒コショウ、ドライパセリを振ったら完成!
★レシピの裏ワザ★ここではベーコンを使いましたが、もし干し桜えびがあれば和風のコクのある香り、味付けになります。その場合も、レンジで蒸す前に水などと一緒に入れてしまって下さい。