ジュニパーベリー

ジュニパーベリーはジンの香りのもと


ジュニパーベリーは、セイヨウネズという低木の果実を乾燥させたスパイスです。

聞いたことが無いという方が多いと思いますが、実はとても有名な蒸留酒(スピリッツ)の香りづけに使われているのです。

歴史も古く、ヨーロッパではありふれた植物でした。その果実「ジュニパーベリー」が酒の香りづけに使えるとなると、低コストで酒が作れますね。

何とも興味深いスパイスではないですか。さっそくこのジュニパーベリーを詳しく学んでみましょう。

1.ジュニパーベリーの名前と歴史

2.ジュニパーベリーの香りや味

3.ジュニパーベリーの育て方

4.ジュニパーベリーシードの作り方

5.ジュニパーベリーを使った料理レシピ

 

1.ジュニパーベリーの名前と歴史

ジュニパーベリーと呼ばれるスパイスは、セイヨウネズという針葉樹の果実です。北半球の比較的寒い地域に広く分布しています。

このジュニパーベリーという名前を聞いてもあまりピンとこない人が多いと思います。なかなかこのスパイス単体で見ることはありません。

ジュニパーベリー

みなさんはジンというお酒を知っていますか?カクテルの材料として日本でも親しまれていますね。

このジンという蒸留酒は、実はジュニパーベリーによって香りづけされているのです。あの独特のジンの香りはジュニパーベリーによってもたらされていたのですね!

元々は11世紀頃のイタリアの修道士がジュニパーベリーを使った蒸留酒を作ったのが起源のようです。

中世ヨーロッパで黒死病が大流行した際にも、このジュニパーベリーの蒸留酒が治療薬として使われていた記録が残っています。

このジンに関しては、17世紀のオランダの医師フランシスクス・シルヴィウス(Franciscus Sylvius)は解熱・利尿用薬用酒として発明したものと言われていますが、実際には彼の幼少期には既にジンが一般的に知られていたことがわかっています。

17世紀のオランダには既に多くの蒸留酒製造業者がいました。原酒にジュニパーベリーやアニス、コリアンダーなどのスパイスで香りづけをして蒸留酒を製造していたのです。その数はアムステルダムだけで400を超えたと言われています。

製造された蒸留酒は、街中の薬局で薬用酒として販売されました。

1689年にオランダ公ウィリアム3世が名誉革命によってイングランド国王になった際に、このジュニパーベリーの蒸留酒ジンはイングランドに持ち込まれました。

ジュニパーベリー

ジンはたちまちイングランド中で大人気となり、簡単に作れるために乱造されました。その大半はジュニパーベリーの代わりにテレビン油で香りづけされた安酒でした。

ジンの大流行は「GIN CRAZE」と呼ばれる社会不安を引き起こします。このジンという強い酒のせいで社会が荒廃してしまったのです。ジンは低所得者の酒、不良の好む酒としてマイナスイメージがつきまとうようになってしまいました。

ところが18世紀半ばにジンの製造が厳しくなり、ライセンスがないと製造・販売できなくなりました。これによってジュニパーベリーによる本来のジンが地位を回復するのですが…

19世紀後半になると連続式蒸留器が使われるようになり、度数が高く純度の高いスピリッツが蒸留されるようになりました。このスピリッツにジュニパーベリーを加えて単式蒸留することで、ドライ・ジンが生れました。

このドライ・ジンが様々なカクテルベースとして受け入れられ、トニック・ウォーターなどとの相性の良さもあって、広く流行するようになりました。

カクテルの王様「マティーニ」、イングランドの植民地で流行した「ジン・トニック」など私たちに馴染みのあるカクテルが多いですね。これらの香りがジュニパーベリーなのです!

ジュニパーベリー

このジュニパーベリー、古くからヨーロッパで収穫されていて、古代ローマでは高価な胡椒の代わりとしても使われていたそうです。あの大プリニウスの「博物誌」にも記載があります。その内容は大々的に誤解に基づいているようですが…

エジプトにも輸出されていたようで、ツタンカーメンの墓からもジュニパーベリーが発見されています。

ジュニパーベリーが採取できる植物「セイヨウネズ」は学名を「Juniperus communis」と言います。このJuniperus という呼び名はラテン語から来ているようなのですが、ありふれた植物であったため、語源は正確には分かっていません。

このセイヨウネズ、フランス語ではGenévrierと言います。ここからジンの呼び名が生れたと考えられています。

 

2.ジュニパーベリーの香りや味

スーパーでジュニパーベリーを買ってきて、臭いを嗅いでみて下さい。あ、ジンの香りがするなあ、となるはずです。

でも、ジンの原料と聞いてなかったらそれこそ胡椒のようなスパイシーな香りだと感じることでしょう。

ジュニパーベリー

またジュニパーベリーを一口かじってみると、その香りが数倍増したような芳香が感じられます。味というよりも香りです。でも中の種が固いのであまり勢いよくガリっとやらないように注意が必要です。

ヨーロッパでは、この複雑な香りを持つジュニパーベリーがあたりに転がっていたようですから、そりゃあ料理や薬用に使いたくなるのも当然といったところですね。歴史が古いのも頷けます。

 

3.ジュニパーベリーの育て方

ジュニパーベリーを収穫するために、セイヨウネズの育て方をみてみましょう。

セイヨウネズは育つと10mもの高さになります。素人的には低木じゃないじゃん!となりますので気を付けて下さい。

このセイヨウネズですが、スエシカとかコニファーという名前で売られています。苗や低木が手に入りやすい部類だと思います。

植え付けは夏の暑い時期を避けて行います。半日陰のところに植えて、土が乾いたら水をあげるようにしましょう。

2か月に1回程度緩効性の肥料を与え、春先には剪定作業をしつつ即効性の肥料を与えて新緑の季節を迎えましょう。

セイヨウネズには雄株と雌株があります。果実を収穫するためには雌雄株を揃えて栽培するようにしましょう。

 

4.ジュニパーベリーの作り方

ジュニパーベリー

ジュニパーベリーを実らせることができたら、それらがしっかり青く色づくまで待ちましょう。

ジュニパーベリーの収穫で一番気を使うのが、先の尖った葉です。手や顔を傷つけないように皮の手袋やメガネなどしっかり対策をしてから収穫しましょう。

一番簡単な方法は果実を叩き落とすことです。実際のジュニパーベリー農園でも行われている方法です。もちろん一つ一つ丁寧に摘んでも構いません。

収穫した果実は、風通しの良い日陰でしっかりと乾燥させましょう。

 

5.ジュニパーベリーを使った料理レシピ

ここまで見てきたように、ジュニパーベリーと言えばジンというほどお酒で有名なスパイスですが、さすがにお酒を造るわけにもいきませんので、ここではジュニパーベリーの風味を生かしたレシピを紹介したいと思います。

スピリッツの香りづけに使われるほど強烈な香りを持つだけに、使い方はあくまで控えめにというスタンスでいきましょう。

5-1.ジュニパーベリーを使ったザワークラウト

5-2.田舎風パテ

5-3.牛肉のポットロースト

 

5-1.ジュニパーベリーを使ったザワークラウト

ザワークラウト

以前にもキャラウェイのところでザワークラウトのレシピを紹介しました。

参考:ザワークラウトのレシピ|キャラウェイ

今回は、同じザワークラウトでも、ジュニパーベリーを使うレシピもあるということをお伝えしたいと思います。

材料:作りやすい分量

キャベツ 半分
ジュニパーベリー 3粒
キャラウェイシード 小さじ1/2
塩 小さじ2
ローリエ 1枚(お好みで)

(1)キャベツは洗って千切りにする

(2)ボウルにキャベツ、ジュニパーベリー、キャラウェイ、塩を入れ、良く揉んで水分を出す

(3)保存容器に水分ごと移して、お好みでローリエを加え、キャベツが空気に触れないように水面にぴったりラップをする

(4)重石(もしくは水を入れたポリ袋)をして3日ほど漬物の香りがするまで常温発酵させる

(5)香りが出てきたら冷蔵庫に移して1週間寝かせて完成!

★レシピの裏ワザ★ザワークラウトの常温発酵ですが、暑い季節は室温が高いので注意しましょう。室温が20℃を超える季節には(4)の段階で冷蔵庫に入れてしまったほうが失敗を防ぐことができます。室温が高いところで発酵させるとうまくいきません…

 

5-2.田舎風パテ

パテ・ド・カンパーニュとして知られる田舎風パテ。今回はジュニパーベリーの香りを添えてみたいと思います。

粒を荒く砕いてそのまま加えますので、食べる際に当たりのスライスができることになります。

材料:1本分

ジュニパーベリー 6個
豚かたまり肉 200g
豚バラ肉 200g
レバー(豚か鶏) 100g
ベーコン 10枚程度
にんにく 1片
タイムの葉 1本
ドライパセリ 小さじ1/2
玉ねぎ 1/2個
ウイスキー 大さじ2
牛乳 1カップ
ローリエ 2枚
塩コショウ 適量
粒マスタード 適量

(1)レバーの筋をとって、牛乳に漬けておく

(2)にんにく、タイムの葉、玉ねぎをみじん切りにする

(3)豚かたまり肉、豚バラ肉、レバー(牛乳は拭き取る)をフードプロセッサーにかける。粘り気がでるまで回す

(4)ボウルに2と3の材料を入れ、荒く砕いたジュニパーベリー、ウイスキー、ドライパセリを加え、よくかき混ぜる

(5)しっかり目に塩コショウして、再び混ぜ合わせたら、ラップをして冷蔵庫で1時間寝かせる

(6)パウンドケーキ型を縦方向に置き、アルミホイルを敷き、その上にベーコンを横向きで敷き、その上に冷蔵庫で冷やした具材を敷き詰める。

(7)ベーコンでふたをして、上にローリエを載せ、アルミホイルで包みこむ

(8)オーブンを180℃で予熱する

(9)オーブンの天板にケーキ型が入る耐熱容器を置き、ケーキ型を置いたら周りに熱湯を注ぐ

(10)オーブンで約90分蒸し焼きにする

(11)鉄串を刺してみて、中まで熱くなっていて、透明な汁が出てくればオーブンから取り出し、そのまま粗熱がとれるまで放置する

(12)皿に切り分け、粒マスタードを添えて完成!

 

5-3.牛肉のポットロースト

最後はメイン料理として出せるレシピを紹介しましょう。

ポット、いわゆるスロークッカーのような電気調理鍋は、日本の家庭ではあまり使われていませんが、欧米ではかなり普通の調理器具で、長時間、低温でじっくり火を通せるのが特徴です。

ジュニパーベリーで香りづけられたやわらかなお肉を作ってみましょう!

材料:2人分

ジュニパーベリー 4粒
牛肉 600g
ジャガイモ 2個
にんじん 2本
玉ねぎ 1個
にんにく 1片
オリーブオイル 大さじ2
ビール 1カップ
ブイヨン 2カップ
ローリエ 2枚
ドライパセリ 小さじ1/2
ローズマリー 1本
塩コショウ 適量

(1)牛肉に塩コショウを振り、キッチンペーパーなどで包んで30分ほど置く

(2)フライパンにオリーブオイルを熱し、強火で牛肉の全面に焼き色をつけたら取り出す

(3)にんにくをみじん切りに、野菜を適当な大きさに切る

(4)フライパンに残った油にニンニクを加え、香りが出たら野菜を加えて軽く炒める

(5)ジュニパーベリーを荒くすり潰し、ローズマリーをザク切りにする

(6)ポットに牛肉、フライパンの野菜と油、その他すべての具材・調味料を入れ混ぜ合わせる

(7)水が足りないようなら加えて、6時間を目安に煮込む

(8)肉がやわらかくなったら、肉を切り分けて、野菜を添えて完成!


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